何度も書いたけど、根室は田舎なので札幌の様な大型宿泊施設は少ない。
なので小学校や中学校で行う宿泊学習と言われる類はキャンプになる。
クラス内でいくつかの班に分かれ、その中の誰かがテントを持って来る事になる。
とは言っても時には班の中に誰もテントを持っていないという場合もあるし、持っていても小さい物しかない場合もある。
そういう時は決まって、学校の先生が俺にお願いをしてくる。
別に俺の家はテント屋じゃない訳ですが、父は自衛官。
自衛隊には大量のテントはあるのだ。
だから、その日だけ貸してほしいと言ってくるのだ。
しかも!他のクラスの分も!!

父はこの様な頼み事があると「おう!任せとけ」と言わんばかりに張り切る。
カッコつけたがるのだ。

 


その日ばかりは大量のテントと共に、俺たち兄弟は車で学校に行く事になる。
学校に着くなり、数人の先生達が職員玄関で出迎えてくる。
「どうも!お父さん!今年も助かります!!」
「なーんも!!なーんもさ!!!」
(北海道弁ではこういう返しをする)

 


ただ、根室は何度も言う様に田舎。
キャンプ場なんて沢山ある訳でもない。
限られている。
だから、小学校の時も中学校の時も同じキャンプ場。
なんなら別の小学校も別の中学校も同じキャンプ場な訳です。
もっと言うならば、今はすでにキャンプ場ですらない。
正確な言い方をするならば、「キャンプ位ならできる自然の場所」だ。

なんか調べてみると閉鎖されたみたい。
でも閉鎖と言っても自然の広場だから多分キャンプ出来るよ。
知らんけど。(無責任)

さて、その場所は根室の中でも自然しかない、「牧の内」と言う場所にあるのだが、この場所、どこの学校にも一人はいるであろう霊感の強い奴らは絶対に近づきたがらない場所なのだ。

 


根室の歴史をしっかり調べた訳ではないけど、事実あった出来事にプラスして本当かどうか分からない噂が入り混じった場所である。

まず、この牧の内で事実あった過去の出来事をお伝えしよう。
検索したら出てるので興味あったら自分でググってくれ。

まず、この場所は住民は少なく、見渡すと砂浜の海岸と生い茂った草木の平野である。
砂浜にはいくつもの朽ち果てたコンクリートの建物とコンクリートの道路がある。
それは第2次世界大戦の時に作られた滑走路とトーチカ、そして防空壕である。
 

1945年8月6日に広島に原爆が投下された2日後の8月8日。
それまで中立だったソ連も日本に宣戦布告する。
要するに、ソ連はアメリカに味方し「俺達も協力するから、ちょっと位日本の領土くれよ」と言った感じで北方領土を占領したのだ。
ソ連による本土攻撃を恐れた日本は突貫工事で根室の牧の内に滑走路とトーチカを建設したのだ。
しかし、まもなく日本は無条件降伏し、この滑走路は使用される事はなかったらしい。

 

(実際の滑走路)

 

(実際のトーチカ)

そしてここからが本当かどうか分からない話。
日本はとにかく急いで滑走路とトーチカを作らなくてはならなかった。
そこで集められたのが朝鮮人だとか網走刑務所の囚人だとかと言う噂があり、強制労働を強いた。
それにより亡くなった労働者が無造作に埋葬されたというのが噂である。

真実なのかは分かりませんが、霊感のある者達は口をそろえて「何かしらの恨みを持った数十人の霊たちが牧の内で彷徨っている。」らしく、その霊達が見えるらしいのだ。
俺はなぁ~んにも見えないけどね。

 


そんな場所にあるのが「牧の内キャンプ場」
そんな場所なのに、夜にはキャンプ行事の一つとして先生達は肝試しをしたがる。

この肝試し、誰かが「わっ!」とか言って脅かすような安っぽいものではない。

キャンプ場からまっすぐ伸びた獣道を進むと、トーチカがあり、そこにバインダーに挟まれた紙があるので名前を書いて帰ってくるという、とてもシンプルかつリアルに怖いものだ。

中学の時のキャンプでの肝試しは男女3人づつの計6人のパーティーを組む事になった。
俺のパーティーは最悪だった。
女子の1人が異様な程に肝試しが苦手な奴がいたのだ。
この女の子は行く前から号泣している。
残りの2人も得意ではないのだが、この女の子が引く程泣いているので、2人でなんとか両側から脇を抱えて支えている状態。

 


そして、男は俺と、ヤンキー1人、そして霊感のある陰湿な虐められっ子。
どうも、ヤンキーと言う人種の中には暴力で解決できない幽霊を異常に怖がる奴がいる。
こいつがそうだった。
「マジで怖えよ・・・・マジで怖えよ・・・」と連呼していた。
虐められっ子はここが仕返し出来る時だと思ったのか、「今、向こうにいる霊がこっちを見ている」とか「今、右を見ない方が良い・・・」とか言い出す。

ヤンキーは「お前は霊が見えるんだから前を歩けやゴルァ」と言って虐められっ子を前に歩かせる。
このヤンキーが一番厄介で、ちょっと草が風で揺れたり、ちょっと音が聞こえたりするだけで、「うわあ!!!」とか叫ぶ。
虐められっ子も「ちょっと止まって!!」とかワザとやってんのか?って思うくらい脅かしてくる。
その度に女子共も「ぎゃあああああ!!」って言っては座り込む。
もう、全然前に進まない。
女子共はこのヤンキーの叫び声に対して「ちょっと!!いい加減にしてよ!!」とかキレ出す始末。

 


時間はかかったが暫くすると前方にトーチカが見えてきた。
その時、ヤンキーが「あれ・・・なんか動いてない?」と指をさす。
全員がその方向を見ると、トーチカの横で何か白いものが動いていた。
俺も背筋が凍った。
ヤンキーは叫び出す。
女子共はもっと泣き叫ぶ。

 


その瞬間、その白いものがフワッと一瞬にして近づいてきた。
全員が「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!」って言ったらコンビニのビニール袋だった。
全員が「うわあああああああああああああ!!!ってローソンかい!!!」って突っ込んだ!!
女子共から集中砲火を受けるヤンキー。
ヤンキーは「でも!マジで怖くね?マジで怖くね?!]って連呼してた。

面倒臭すぎて、この時ばかりは全員死んでほしいと思った。