ブログネタ:この夏、太った?痩せた?
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本文はここから
『あいつがいなくなって、ホント
せいせいするよ』
『もう一年だよな』
『復帰するとかいう噂もあるけど
・・・・・・・・・・・』
『冗談じゃないよ、また、あいつが
ノコノコ、戻ってきたら、ぶっ潰して
やろうぜ!!』
『でも、あいつのバックにはヤクザが
・・・・・・・・』
『そんなことより、このエビマヨ美味
いぜ!!』
『あいつ、無人島にいるとか言って
から、復帰はないんじゃないの?』
『もういいよ、あいつの話題は
止めよう、酒が不味くなるよ』
『そうだな』
8月下旬、東京都内某所。
そこで開催されたパーティー会場
で交わされていた会話の一部である。
『一周年記念パーティー』
それはある男がある業界から半ば
強制的に近い形で引退に追い込まれた
ことを祝うパーティーであった。
その男はそれほど敵が多かったこと
の証明だが、当の本人はきっと最後
間でそのことに気づいてはいなかった
であろう。
『俺、この1年でかなり太ったよ
多分さあ、それもあいつが消えた
せいだと思うね』
『何か、俺も、あいつがいなくなって
かれ飯が美味くてさあ、ストレス
がかなり減ったのか、タバコ
吸うのも減って、今じゃあ完全に
止めたからね!!!』
『それにしても、あいつのファミリー
だった連中って、誰も来てない
よな!!』
『当たり前だよ、そんなの!!
あいつらにとっちゃ、あの糞アゴ
は未だに教祖様みたいなもん
だろ!!!』
『でもさ、あいつの愛人だったって
噂の熊田が来てたの、さっき
見たぜ!』
『うそだろ!!あの女、最近結婚
したとか、それに妊娠もしてん
だろ!!!』
『そうだけど、あんな女、イタイ
だけだろ、頭悪いんだよ
ただ乳がデカイだけでさあ』
ある一角ではこの様な会話も
交わされていた。
そこから少し離れた人並みの中に
この会話に登場した熊田という
ただ乳がデカイだけの女も
いたのだ。
彼女は週刊誌などで男の愛人
などと書かれたりもしていた
ものだが、そんなことはどこ吹く
風、またはそんな事実はなかった
と自ら証明するつもりで
このパーティー会場にやって
きたのか?
いずれにしろ、彼女は大きな腹を
抱えながらも、この会場ににいる
ことに全くの違和感など感じている
様子など、微塵もない感じを
振りまいていた。
そんな会場の一角にまた
野久保の存在もあった。
大きな人垣が出来、そこで
みなが口々にそこには存在
しない、しかしこのパーティーの
主役である男をこき下ろして
いた中で野久保の傍らに
いたのが狩野だった。
狩野は野久保の横で
皿の上のローストビーフを
フォークで突き刺し、それを
口にしならがら、しきりに
パーティー会場を見回し
つつ、
『それにしても、すごいね
有名人だらけだよね』
と暢気なことを言う。
そんな狩野を見ながら野久保は
『そういえば、狩野くんって憧れ
の人物、あいつだって言ってた
ような気がするんだけど・・・・・』
何気なくそんなことを言った。
それを聞いて狩野は
急に皿を落とし、そしてむせ返る
ように咳き込みながら
『野久保くん、それは何ていうか
あれは若気の至りっていうか
若気の至りなんだよ、頼むよ
野久保くん、僕もあれは本当に
後悔してるんだよ、許してくれよ
!!!!!!頼む!!』
野久保の前で両手を合わせ、
そのうち土下座でもする勢いで
言い訳めいたことを口にした。
もちろんかつて彼は憧れの
人物してこのパーティーの主役
である男の名前を出したこと
はあった。
しかし狩野自身、今は完全に
そんな器の人物ではないことを
理解していた。
皿の落ちる音に反応して、この
様な野久保と狩野のやり取りに
数人が彼らの方に目を向けた。
しかしそれも束の間のことこの
2人のやり取りもパーティーの
喧騒の中にかき消されていった。
全く悪気もなく言った野久保の
一言に狩野はくしばら放心状態の
ままだったが、そんな2人のところへ
『それにしても、参ったよ!』
などと言いながら、しかし顔を
ニヤニヤさせながら近づいて
来た男がいた。
それが彼らの仲間でもある
塩谷だった。
よく聞くと、それはこの会場に
塩谷が結婚してくれなどと
いい加減なことを言って、
騒動を起こした子持ちのモデルが
この会場に来ていたからで
あったのだが、当の塩谷は
どういう訳か、先ほどの狩野とは
対照的に浮かれていることは
明らかだった。
そこで野久保はそんな塩谷に
聞いてやった。
『えっ?じゃあ、あの料理研究家
の人はどうなの?
その料理研究家とは子持ちのモデル
とほぼ同時期に塩谷がプロポーズ
した相手だったのだが、さすがの
塩谷もこれには
『ちょっと、野久保さん、それだけは
勘弁してくれよ!!』
と、先ほどの浮かれようとは
裏腹なことを口にして、野久保を
睨みつけた。
そんな2人を見ながら、さっきの
自分の態度はどこへやらという
風に狩野はいつの間にか彼らに
笑顔を送っていた。
改めて野久保は会場全体を
見回してみる。
そこかしこに有名人がいるのが
目に付いた。
誰も彼もが名の知れた著名人
なのだ。
それは隣にいる狩野にしても
塩谷にしても、今の彼に比べれば
そうであった。
そんな中で野久保は自分が一番
底辺にいるのではないかという
思いの捉われていく。
『あっ!』
野久保がやや自分ひとりが取り残されて
いるような居心地の悪さの中で突如
狩野が声を上げた。
『何?』
『何って、エリカだよ、エリカ!』
『エリカって、何?沢尻?』
『そう、沢尻!』
狩野と塩谷は素人同然にはしゃぎ
始めた。
野久保は2人の視線の先を追うと
そこにはこれ以上はないほど
周囲を巨大なツバで覆われた
帽子に、これも顔全体を覆い隠す
勢いのレンズを持つサングラスで
顔を固めた女が野久保たちの方に
近づいてきて、やがて3人の前を
通り過ぎようとした。
塩谷はかつて彼女と仕事を共に
したこともあり、そんな彼女に
近づこうとしたが、見事に彼女の
お月に人間に遮られ
『オイ、エリカ、俺だよ、俺!!』
などという虚しい言葉を響かせる
ことしか出来なかった。
だが彼はまだ諦めきれないのか
彼女の追いかけていった。
残された野久保と狩野は呆気に
取られつつも、先ほど通り過ぎて
いった女を見つめるのだが、
そこからはすでに帽子の巨大な
ツバとその上にある造花か
何かが見えるだけだった。
『エリカ、エリカ、俺だよ!』
相変わらず塩谷の叫び声が
聞こえたのだが、やがて彼女の
警備の一人が彼の首根っこを
摑むや否や、その場で床に
押さえ込むようにして、彼を
見事に床の上に押さえつけた。
警備の男は軽く手を叩くと
また彼女の後を追った。
『凄いね』
すっかり正気を取り戻した狩野は
再び皿の上の料理にフォークを
走らせながら、野久保に向って
いった。
果たして野久保には狩野が何に
たいして凄いと思ったのかは
分らなかったが、今見た光景の
すべてが凄いといえば、それは
それで間違いではないように
彼には思えた。
やがてパーティー会場の舞台に
お笑い芸人の2人が出てきて
このパーティーの主役である
そこには不在の男の近況など
語りながら、ゲーム大会の
ようなものが始まった。
そうしてパーティーは益々の
盛り上がりを見せるのであった。
有名人ばかりのその会場で
かつては有名人の一人だった
野久保はその後も違和感は
消えることはなかった。
塩谷と狩野もやがてパーティー
の喧騒に巻き込まれていくこと
になるのだが、野久保は最後
までそれに乗れない自分
にもやがて違和感を抱くことに
なった。