『お金もうけ』と言う言葉が父の辞書にはない
子供の頃、父と母の口げんかをいやというほど聞いた
父は田舎の貧乏寺の住職
母は子沢山の子供たちを満腹にすることで、毎日大変だったようだ
貧しい檀家からはお葬式のお布施さえ頂いてこない父だった
子供たちはかろうじて母の耕した農作物で空腹をごまかしていた
「今日のお布施はいくらでした?」
「もろてない」
「どうして?」
「○○さんとこは今あるお金をもらったら
子供らに食べさすことが出来ん」
「うちにも子供がいるんですよ・・・・」
二人の喧嘩はいつも同じ言葉ではじまり、同じ言葉で終わった
そのあと、決まって母は涙を流しながらジャガイモの皮をむき
父は御詠歌を詠う
その声が夕闇に紛れとても悲しく聞こえたものだ
私は困った気持ちで母のそばに座る
今でもそれは電気をつけない薄暗い中の思い出
そのころは母を泣かせる父が不思議であった
貧乏で洋服1枚買ってもらえず上からのお下がりばかりで
父を恨めしく思ったこともあった
そのころの父の年齢に近くなった私は
父は僧侶としての道をまっすぐに歩いていたんだと
思えるようになった
父は人として立派だったんだと思えるようになった
一度で良いから心行くまで一緒にお酒を飲みたかった
そして、もっと父と本音の話がしたかった
明日は母の7回忌です
一足早く逝った父と、また昔のように一緒に暮らしているのかしら
喧嘩もしているかしら
まあ私が訪れる頃には行きつけの飲み屋もできて
きっと待っていてくれると思っています
「おー来たか!!」って・・・
二人で笑いながら迎えてくれることでしょう・・・