『なんぞころびやおき　地球慕情篇』

(23)

峠杣一日・著

「むむむ、これはいかん」

こっそり様子を窺(うかが)ってゐた兇興翁(きょうきょうをう)が、狼狽(らうばい)して腿(もも)高くその場で駆(か)け足をする。

萬把党(まんぱたう)の剣客(けんかく)兇薬(きょうやく)と対峙(たいぢ)するのは、大神山烏天狗(おほがみやまからすてんぐ)の頭領(とうりゃう)山刀斎(さんたうさい)。

刀神(たうしん)とも称(しょう)される、剣の達人だ。

その手には、鉈(なた)にも似た分厚い山刀(やまがたな)が閃(ひらめ)く。

構(かま)へる兇薬の全身の毛孔(けあな)から、迸(ほとばし)るやうに汗が噴(ふ)き出す。

「ばかな！

そんな満身(まんしん)水芸(みづげい)みたいになった奴が勝てるもんか！

えい、かうなったら！

萬把党の主題歌(テーマソング)で応援する他はあるまいて！」

おほん、歌ふ兇興翁。

〽️(挿入歌)

「天誅！萬把党の歌」

一、

おつむの　螺子(ねぢ)ぽん　脳足(なうた)りん

いかれぽんちの　殺人鬼

白昼堂々(はくちうだうだう)　許すまじ

腐(くさ)れた　目ん玉　刳(く)り貫(ぬ)くぞ

ああ我等　萬把党　萬把党

二、

ぷうんぷん　臭(くさ)いぞ　鼻曲がる

いかれぽんちの　殺人鬼

白昼堂々　許すまじ

くすんだ　生き膚(はだ)　剝(は)ぎ取るぞ

ああ我等　萬把党　萬把党

三、

全身　噴き出す　毒ガスだ

いかれぽんちの　殺人鬼

白昼堂々　許すまじ

氣狂(きちが)ひ　どもの　首を打つ

ああ我等　萬把党　萬把党

四、

子供も　明日(あした)は～あっ！！

ホントあっさり、兇薬の生首がすぱっと宙を舞ってころりんこした。

「やはり敵(かな)はなんだか。

わいは精一杯(せいいっぱい)に歌ふたんぢゃがなう」

がっくり肩を落とす兇興翁。

【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】

〽️

いやさかえ

いのちいやちこ

さいはひよいち

まほらとこいは

みつのたま

南無あれかし大明神

南無あれかし大明神

南無あれかし大明神

つづく。

『なんぞころびやおき 地球慕情篇』(23)

『なんぞころびやおき　地球慕情篇』(23)