『なんぞころびやおき　地球慕情篇』

(21)

峠杣一日・著

「おお、おお。

蛆虫(うじむし)どもめ、雁首(がんくび)揃(そろ)へてをるな」

秘密のアジトを出て程(ほど)なく、天誅(てんちゅう)の標的(へうてき)を見付けた梟男(ふくろふをとこ)兇薬(きょうやく)。

すぱすぱすぱっとこんころりん。

有無(うむ)を言はせず斬首(ざんしゅ)。

ゴム毬(まり)のやうにぽんぽんと弾(はづ)む生首の群れが、坂道を転げてゆく。

下の方から悲鳴が駆(か)け上がって来た時には、既(すで)に兇薬の姿は無い。

断末魔(だんまつま)の悲鳴を発した生首に坂の上の胴体がぴくりと反応し、その揺(ゆ)れでバランスを崩してばたりばたりと倒れてゆくのだった。

「さすがは兇薬どの。

すこぶる眼福(がんぷく)を頂戴(ちゃうだい)いたしました」

「まことに。

胸がすく神業(かみわざ)でありますなあ」

兇薬に師事(しじ)する萬把党(まんぱたう)の同志(どうし)たちが、合掌(がっしゃう)して感涙(かんるい)に咽(むせ)んでゐる。

「なに、同志諸君。

これは奉仕業(ほうしげふ)なのだ。

蛆虫どもを救ふてやってをる。

そのつもりで修錬(しうれん)を続ければ、必ず出来るやうになるものだよ」

きょきょきょ！

為(し)て遣(や)ったり。

兇興翁(きょうきょうをう)のほくそ笑ひが止まらない。

【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】

〽️

いやさかえ

いのちいやちこ

さいはひよいち

まほらとこいは

みつのたま

南無あれかし大明神

南無あれかし大明神

南無あれかし大明神

つづく。

『なんぞころびやおき 地球慕情篇』(21)