『なんぞころびやおき　天球旅情篇』

(50)

峠杣一日・著

兇頑(きょうがん)と兇闇(きょうあん)に迫る、死に神。

其処(そこ)へ、真っ黒焦(こ)げの兇興宇宙円盤(きょうきょううちうゑんばん)が割って入る。

兇蔵(きょうざう)と兇然法師(きょうねんほふし)

が頑闇兄弟(がんあんきゃうだい)を担ぎ込むと再び飛翔(ひしょう)……のつもりが空中に浮かんだまま動かない。

機体(きたい)から融(と)け落ちる様に、無数の腐れ眼弾丸(くされめだま)が幾条(いくすぢ)も列(つら)なり溢(あふ)れてゆく。

命が、漏(も)れ出してゐるのだ。

「ぐおおおおっ！

私(わい)の！

この私の命が尽きると云(い)ふのかあああっ！！」

半狂乱(はんきゃうらん)の葈耳型宇宙円盤兇興翁(をなもみがたうちうゑんばんきょうきょうをう)が、死に神へと決死(けっし)の突撃(とつげき)を敢行(かんかう)する。

しかし、時空(じくう)そのものを含み持つ死に神の前には、全く以(もっ)て何(なん)にもならない。

死に神とは糸二祖(しのふたおや)たる常の父母(とはのちはは・永久の父母)、即(すなは)ち宇宙そのものでもある。

宇宙とは、命である。

命とは意の霊(おもひのはたらき)、令(みことのり・やはらぎの世を育むべし)の口(ありか・あらはれ)である。

それはまた宇宙の意志(いし・おもひとこころざし)とも云へる。

意(心に太陽が昇る親の働き)

志(心の向かふ方向・子)

三つ子の魂(みつごのたましひ)、常の親子(とはのおやこ)、常の理(とはのことわり)……等と呼び馴(な)らはされてゐるものだ。

所謂(いはゆる)迷ひと云ふのは常の理(とはのことわり)に幼(をさな)い事であり、つまり勘違(かんちが)ひの事なのである。

さて、死に神の黒い影に包み込まれた兇興翁達。

全身全霊すべての腐れ眼弾丸細胞が崩壊(ほうくわい)し、消滅(せうめつ)してゆく。

【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】

いちよあれかし、さいはひよいち。

まほらよいちそはか、南無あれかし大明神！

つづく。

『なんぞころびやおき 天球旅情篇』(50)