『なんぞころびやおき　天球旅情篇』

⑪

峠杣一日・著

現し世(うつしよ・人の世)は、言事(ことごと・言と事)に因(よ)って成る。

常の理(とはのことわり)が現された社会だ。

此の社会(現し世)があってこそ、善道(ぜんだう)や正義が通るのである。

(言事の現し世無くば、善道も正義も無し)

人世(人生)の最小単位は家、最大単位は国。

(国際社会は国々の協調)

国は家々を育み、一人ひとりは家の命を生きる。

現し世は、常(とは)の親子国家にあるのだ。

(個人主義(利己主義)や支配権力なんどは、迷妄念々(めいまうねんねん)の傀儡(くわいらい)に過ぎない。善道も正義も、当然平和も、さてもそもそも自分すら成らない)

言事家(ことごといへ)無くば、人世(人生)は空(むな)しい。

そんな常の理(とはのことわり)を育む意(おもひ)を、大和心(やまとごころ)とも呼ぶ。

以上の意を祀(まつ)るのが、日本の故郷即(すなは)ち出雲国の中心意宇の杜(おうのもり)に鎮(しづ)まる言屋社(いふやのやしろ・揖夜神社)である。

此(こ)れ、言霊(ことだま)の斎場(ゆには)なり。

ああ、いちよあれかし、いちよあれかし……

はて、経法印(きゃうほふいん)達が去った鎮守(ちんじゅ)の社(やしろ)に女がひとり。

やや、邪悪原人(じゃあくげんじん)の末裔(まつえい)お冥(おみゃう・兇冥きよみ)である。

梟(ふくろふ)を二羽、随(したが)へる様にして立って居るぞ。

【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】

いちよあれかし、さいはひよいち。

まほらよいちそはか、南無あれかし大明神！

つづく。

『なんぞころびやおき 天球旅情篇』⑪