『なんぞころびやおき　御魂ケ島篇』

(39)

峠杣一日・著

「ぎゃほおおおおっ！！」

「煩(うるさ)い！」

蒟蒻田楽(こんにゃくでんがく)は煉り味噌(ねりみそ)を塗(ぬ)って食べるのが美味(うま)い。

どれ、ちょいとぴりりと山椒(さんしょ)味噌に兇蔵(きょうざう・目ん玉)をぐりぐり。

「っ！！！！」

兇蔵、沈黙(ちんもく)。

ほっ、巧(うま)い事、仁王門(にわうもん)へ向かふ蓮権現転何(はちすごんげんころびなんぞ)の目を搔(か)い潜(くぐ)った。

「見たか、俺(おれ)の賢(かしこ)さ振(ぶ)りを！

よもやの田楽隠しで、蓮権現の目も節穴(ふしあな)よ。

どんと有難く思へ爺(ぢぢい)、ほほほ」

「一寸(ちょっと)裾(すそ)で隠せば事足りたぢゃろよ…もう、儂(わし)は駄目かも…」

其の頃、時空仁王門が起動(きどう)しない事に首を傾(かし)げる蓮権現転何。

ひとつ大きく伸(の)びをして、本堂(ほんだう)へと続く長い石段を上(のぼ)り始めた。

お、石段の上空を目ん玉田楽を咥(くは)へた梟(ふくろふ)が一羽(いちは)、

「あっかんべーい！ほほほ」

と一鳴(ひとな)きして飛んで行(ゆ)くよ。

【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】

いちよあれかし、さいはひよいち。

まほらよいちそはか。

南無あれかし大明神！

つづく。

『なんぞころびやおき 御魂ケ島篇』(39)