夏 | ryo's happy days

ryo's happy days

思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

「近江神宮の参道を歩いてみてください」と勧められていましたので参道をゆっくりと歩きました。

参道を挟む樹々がまるで空まで繁るようで高いところから降る木の葉はヒラヒラと木漏れ日に輝いて

本当に美しい。風もないのにハラハラと止むことなく降る木の葉、感動しました。

近江神宮は百人一首で有名

百人一首はほぼ覚えています。⭕️私のおはこはこれ。寂しさに宿を立ちいでながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

⭕️母のおはこはむらさめの露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕暮れ

 懐かしい母との思い出は百人一首の中にもあります。

 木漏れ日を仰ぎつ馳せし過去の夏

 連載小説

   「幸せのパズル2」その3

 悍ましさに思い切りその指を払いのけると、大声で喚きそうな声を必死で抑えた。

「年寄りと思って甘く見るな! あのときは訳のわからない若者の歌ばかりで乾杯なんてそんな古い歌、誰も歌わなかったよ。第一未成年ばかりでジュースかコーラしかなかったはず。ほら、腕、放して! 放さないと大声出すよ」

 カナエの金切り声に若者はやっと正気に返ったのか、はっとしたように腕から手を離した。

 財布から五千円札を取り出すと若者の掌に捩じ込むように渡す。

「こんなこと、今後一切したらダメ! オレオレ詐欺は犯罪だからね、あんたはそんな悪い子じゃない、あんたの目は濁ってなんかいない。澄んだ目をしてる。年寄りを悲しませなさんな!」

 

 まだドキドキしている。海星としては魔が指したとしか言いようがない。切羽詰まっていたのだ。胸の奥底から泣きそうなほどの後悔が押し寄せていた。ドアを後ろ手に締めるとそのまま流しの水道に口をつけて水を飲んだ。口から溢れた水がトレーナーの隙間から胸元に流れ込む感触を覚えながらも飲み続けるとやっと蛇口から口を離す。ついさっきの自分の愚かな行動が耐えられずに涙がボロボロと溢れては情けなさに身をすくませて床にへたり込んだ。

「あんたはそんな子じゃない。目を見たらすぐわかるとよ。あんたはそんな悪いことする子じゃない。年寄りを悲しませちゃいかんよ」

 そう言って握らせてくれた五千円札が掌に汗と一緒に握られている。汗は暑いからではなく冷や汗とも脂汗とも思えた。とうとう俺はこんなとこまで堕落してしまった。五千円札の皺を丁寧に伸ばすと冷蔵庫のドアにマグネットで留める。これは使えない…。