日本は卒業シーズンだ。
日本の公立小学校で,6年生の担任をした時のこと。自分のクラスだけではなく,6年生4クラス,約150名全員にコサージュを作ろうと漠然と思ったのは担任になった一年前の4月。入学式や卒業式で胸につけるリボンは,昔よくあったピンクのギフトラッピング用のボウだったから...。検索してみると「昭和チックなリボン」で出てきたが,金色が入った張りがあるあのリボン。
前例がないから,年末に学年会で話してみて,校長先生にも許可をもらう。多忙を極める卒業式前の2か月半で,一人で作れるもの。冬休み中にいろいろ考えて,新学期を迎えると,校長先生が「こういうのはどう?」といくつか雑誌のサンプルを見せて下さった。事務員さんも材料費は出すよと声をかけてくれ,学年の担任の先生方も受け入れて下さった。本当にありがたかった。
花柄模様の布はパッチワーク用に買ったものをたくさん持っていた。刺繍機用の糸・フェルト・葉っぱ用の布・安全ピンは購入。

左側の白い大きめのものは担任用。残り2つは予備。
毎日仕事から帰宅すればすぐに刺繍機のスイッチを押した。「そつぎょうおめでとう」とスカラップ模様の刺繍に10分はかかったろう。
バラの花は,花柄の布を二つ折りにし,手縫いで縫い絞ってくるくると巻いて作る。一つのコサージュにつき3枚必要。
葉っぱは厚手の深緑色の生地。ミシンで縫ってから表にひっくり返す。そして3枚を手縫いでつなぐ。
参考にしたのは「余り布で作る花 No.2」(ブティック社)という本。
「そつぎょうおめでとう」の文字のつなぎ目は,ハサミでカットしなければならない。わずか1mm程度の糸一本なのでそのままでも文字は読めるが,カットすればより鮮明で仕上がりもキレイ。後輩の教員が家に持ち帰って,ていねいに切ってくれた。
多くの教職員のお陰で,無事に卒業式の日を迎えた。もう22年も前のこと。みんな,本当にかわいい子ども達であった。幸福な人生を送っていることを切に願う。