ボランティアで作った車椅子のシートカバーです。引き続き,ハンディキャップ児(12歳)用。

ネットで調べてみると,足が不自由な方の一般的な車椅子というのは,こういう箱のような形状。長方形のシートカバーが販売されています。

しかし...これで,本当に横モレに対応できるのか...?食べこぼし防止って,シートのどの部分のこと?
私が注文を受けたのは,特注の車椅子にはめ込んで使う特注の椅子(古い物を借りた)に合うシートカバーです。

身体に合わせて椅子の型が取ってあり,丸いくぼみに身体(背中・お尻・太もも)がすっぽりと固定される作り。薄いスポンジの上に黒い布が全体に張ってあります。
特注のこの椅子は約20万円もするらしいので,絶対に汚したり破いたりしないようにしなければ。オムツの尿もれの度に洗ったり(除菌したり)乾かしたりすれば,傷みますし,洗う手間も乾かす時間もかかるでしょう。
12歳なので尿の量も多いだろうし,ズボンの上方からの尿もれも考えると,背中・腰の両脇・足部分すべての布を長めに取って深く縫う必要があります。
バスタオルのような長方形の布を敷くと,ひだの厚みが出て椅子が身体にフィットしなくなってしまう。時間が経てば布もずれて,座り心地も悪くなるでしょう。
絶対に椅子を汚さない・防水加工の布を使う・薄い・座り心地が良い・洗える・ずれない・お世話をする人が簡単に取り替えられる・数枚作る・できるだけお金をかけない(材料費のみ頂く)...ということを考えて作り始めました。
まず,大きな薄い紙(割れ物を購入した時の包み紙)で試作品を作ってから,タオル地と防水布を裁断。よだれかけ同様,2枚重ねです。
ずり落ち防止のために,車椅子に引っかけるゴムを上方に縫いつけました。両脇には車椅子の固定ベルトを通すための穴。2枚の布はバイヤステープで一周ぐるりと縫い合わせていますが,下方は縫い合わせずに,使い捨ての大きなシート(睡眠時に使用)を二つ折りで差し込みました。
最も難しかったのは,ダーツ部分。タオル地の厚い縫い目が背中に当たってゴロゴロしないように。
試作品(クリーム色)を持って行き,他の子どもを座らせて感想を聞きながら手直しです。実際に座らせてみると,お尻の部分が思ったより深ーくくぼんで,脇部分にひだもできてしまいました。脇の布が全然足りなくなってしまい,尿もれに十分に対応できない...小さ過ぎ。
大きく作り直したのが,この緑色。この画像は,裏側から見たところで,右方は使い捨ての防水シートを入れる大きなポケットです。

その他,車椅子用の足カバー・室内椅子用のカバー・あごや首周りにつけるカバー等...12年に渡って様々な布製品を作ってきました。見たこともない道具に合わせるためのカバーを,母親の希望を聞きながら縫うのですが,彼女は裁縫をしないこともあって,それは無理だろうと思う注文ばかり...。縫う側と使う側の立場が違うから当然なんですが,ホント悩みの連続でした。
今回は丸々5か月間で,よだれかけ16枚・車椅子用クッション・車椅子シートカバー3枚を制作。
無事に作り終えてほっとしたと同時に,役に立ててよかったという充実した気持ちです。