暴風雨のシーズン到来ですが,ひと雨ごとに緑が鮮やかさを増しています。メモリアルデーの連休は庭始めをする人が多く,ひと月遅れの「みどりの日」のような感じ。一年で一番好きな季節になりました。

小鳥のエサをやりに裏庭に行き,ふとホスタスの根元付近に目をやると...可愛らしいスミレの花がこんもり!テラスの下の方にもぽつぽつと咲いていたので,どうも自生したようです。
カトリック教では,5月は聖母月,つまりマリア様の月だと言われています。マリア様の花とされるのは,バラ,ユリ,そしてスミレの花。小さくて可憐なスミレは,謙虚さと誠実さを表しているそうです。
 
そういえば,社会人になって国語の文章読解と油絵を習っていた先生宅に,室内にスミレの鉢植えが置いてあるのを見て驚いたものです。さらに,水槽にはメダカがたくさん飼育されていました。日本の実家は田舎でしたのでそこらじゅうにスミレは咲いていましたし,家の前の川にはメダカやフナがいっぱい泳いでいました。わざわざ家の中で育てるということは考えもしないことでしたから,「わあ!」という私の反応は,「かわいい」とか「珍しい」ではなく,「どうしてこのようなものをわざわざ室内に?」というものでした。川も野原もない市街地にお住まいだと珍しいのだろうなぁくらいの感想だったのですが,今になってみると,豪華な胡蝶蘭の花や高級熱帯魚ではなかったのが先生のお人柄を表しているようでもあったなとなつかしく思い出されます。
 
調べてみますと,うちの裏庭のスミレの種類はsweet violet(ニオイスミレ)と呼ばれるもののようです。しかし,匂いは全くしません...。葉の形はハート型に近く,好きなトーンの緑。しかも,テラスの下の方には若草色のふかふかの苔まで生えていて...最高です。
どんどん茂るスミレを玄関先の小さな鉢に植え替えてみたり,小瓶に挿したり…うちのキッチンでは立派な切り花よりも野草の方が目を引きます。これは明るいテラスで撮影。中性色の紫と緑が涼しげに見えるように,瓶に青いガラス玉を入れ,ポトスも添えて…エーデルワイスの刺繍入りのコースターを敷いてみました。

スミレ色の壁に,スミレの花のボーダーをアクセントにしたキッチン・バスルームにしているアメリカ人の方がいますが,中性色は季節を問わずさわやか。
 
俳句の季語の本によりますと,「花のかたちが大工道具の『墨入れ』に似ているので,スミレという名はそこからきたという」と書かれています。はて,墨入れ(または,墨壺)とは何かさらに調べてみると,大工さんが材木に直線を引く時に使う筆ペンのような役割をしているもので,墨を入れた墨壺から糸をぴんと引き出して,木材に印をつける道具!是非,実物を見てみたいものです。
 
漢字では菫(スミレ)と書きますが,横棒が何と七本もあり,「書」(八本)に次ぐ多さでは。直線ばかりで字形そのものは美しいとは言い難いのですが,可憐な花のイメージが手伝ってか好きな漢字です。
 
考えてみると,ペーパークラフトにおいて,紫はイースターやハロウィンなどでしか使ったことがありません。スミレを象徴とした作品を作ってみたいと思います。