トランシルヴァニア地方(旧ハンガリー/現ルーマニア)の伝統刺繍「イーラーショシュ」のキットです。もうずいぶん前に,現地に住む谷崎聖子さんに送って頂いたものです。
この伝統刺繍を紹介していらっしゃる谷崎さんについては,「伝統刺繍 イーラーショシュ!」(2015年7月30日)の記事にも書きました。谷崎さんが日本語で紹介される前は,日本語で何と呼ぶのか(カタカナ表記)すら不明だったこの刺繍の種類。
トランシルヴァニア地方に行った時にお土産でいくつか購入しましたが,親戚の案内であるにも関わらず売ってある店を探すのにひと苦労。この刺繍をやる人も減ってきているので,本当に幻の刺繍なんですよ。自分で作るしかないのか!?
さて,これは図案・針・糸・詳しい刺し方の説明つきの便利なキット。刺繍キットや小物などは,日本へ郵送販売されていらっしゃいますし,フェリシモさんからもキットが出ているようです。当時の話では,アメリカにも送ることができると聞きました。出版された本(日本のアマゾンから入手可)は大型本のようですし,一時帰国した時に買って持ち運んで来ようと思っています。円形は難しそう…1つしかない大事なキットなので,練習なしにいきなり本番は怖い!
刺繍にもいろいろありますが,少し前に雑誌で見ていいなと思ったのは,Sarah K Benningさん(Fiber Artist)というアメリカの現代刺繍。フランス刺繍用の糸(25番)を使ったものでしょう。モチーフは鉢植えの観葉植物が多く,いずれもサテンステッチでみっしりと埋められています。フープに入れられた小作品は,素敵なアートです。
アメリカで刺繍といえば,クロスステッチが多いような気がします。クロスステッチは×模様で全体の絵を表現するもので,決められたマス目の中を線で埋めていく感じですから,アートではなくクラフトと呼ばれるのも納得です。でも,大作で濃淡を表現した絵画風のものはアートの領域でしょうネ。
クロスステッチは幾何学的で近代的な雰囲気がしますが,イーラーショシュは丸っこくて素朴な味わい。伝統的なのはこの赤一色のチューリップ柄で,東欧の田舎の香りがいっぱい詰まっています。トランシルヴァニアに住んでいる主人の従姉(2度会った)がこの刺繍をやっていますから,いつか習得したいと思っています!