大人になって海外旅行をするようになると,出先で所持品の置き忘れをしないように,「あとみ」をする癖がつきました。英語のようですが,もちろんAt meではない。漢字で書けば跡見のようです。後見ではないのですね,なるほど。

 

英語には,Finders Keepers(拾ったものは我がもの)という道徳心のかけらもないことわざがあります。主人は仕事で日本に行った時に置き忘れた傘が宿泊先のホテルに戻って来たことに衝撃を受けて,アメリカ人によくその話をしています。そういえば,私も日本で夜に車に乗り込んだ時に落としたカード入れが戻ってきたことがありました。新聞配達員さんが届けてくれたと聞きました。

 

「あとみぐせ」…他の言い方があるのかわかりませんが,これは大橋鎭子さん(「暮らしの手帖」の創始者)が著書「すてきなあなたに」で書いていらした言葉。確認ではなく,跡を見る,という行為そのものを表した言い方,洗練されていないのに何ともいいですね。こういうのは,今どきの言葉やカタカナでは伝わりません。首を曲げて椅子の下までよーくよく見る,という感じが伝わってきます。

 

大事なものを紛失した経験などから,外で席を立ったら椅子の下まで見て「全部持ったよね。忘れ物なし」と口にします。もちろん自分の持ち物だけではなく同行者の荷物も確認しますが,「忘れ物をさせない」のはおせっかいではなく気配りだと思います。これがだんだんエスカレートして…見ず知らずの人が席を立った時に,自然と椅子の周りを見る癖がついてしまった!デトロイト空港では,何と1時間内に外国人のパスポートを2度も見つけたことがあります。一人はトイレの個室のペーパーホルダーの上で,もう一人は待合室で席を立って行かれた直後。すぐに声をかけました。

 

うちの父は,電化製品などを買えばすぐに油性マーカーで名前と住所を本体に書いています。落としたら届けてもらえると思っているのか,単なる記念のための記入なのかはわかりませんが…。伯母(父の姉)宅を訪ねて東京に行った際に,持参したカメラを紛失。普段は遠出をしない父のカメラには,「福岡県 久留米市 中村町 345 山田 太郎(仮住所・仮名)」の「中村町 345 山田」のみが書かれていました(笑)。どれだけ有名人でも,これで落とし主が特定できればすごいことです(あ,でも日本ではこれだけで郵便物が正しく届いたと聞いたことがあります)。しかし,所持者が特定できたからといって,安物のカメラでも戻ってくることはないでしょう…。

 

アメリカで知人から「入れ歯を置き忘れて紛失したので探して欲しい」と頼まれたことがあります。トイレなどありそうな場所は探したけれど,公共の場所だったので結局出てきませんでした。盗んでも使える人はいないのに,置いたと思われる場所にはありませんでした。かつらや入れ歯,薬(痔や水虫)などプライベート色が濃いものや替えが効かない物は置き忘れないようにしたいところです。

 

冬に最も紛失しやすいのが,手袋。捨てられない片っぽだけの手袋がいくつかありますが,今年はなくさずに冬を終えたいものです。