今年も間もなくサンクスギビング(11月第四木曜:11月23日)がやってきます。私が渡米したのは秋だったので,すぐにサンクスギビングがやってきたのを覚えています。日本人の方と食事をしていたら,ふいに「~さん(私のこと)は,サンクスギビングはどちらへ旅行に行かれるんですか?」という質問。
私の返事は,「は?」です。
「どこかに行く予定がありますか?」ではなく,「どちらへ行かれるのですか?」・・・どこかに行くことが前提になっているんですね(笑)。
渡米したてでしたし,旅行なんて考えたこともなかったので「特にどこにも行かない」と答えたところ,ものすごく驚かれ「何故?」と聞かれました。何故と問われても…普通は旅行に行く理由の方が問うに値するんじゃないでしょうか…。サンクスギビングは普通家族が実家に集まるのですが,この質問はもちろん親せき宅に行くための旅行ではなく遊びの旅行という意味です。
それであることを思い出しました。日本で教員になって1年目に,週末に出した学級通信に「よい休日をお過ごし下さい」ということを書いたことがあります。学年主任の先生から,「土日が休日ではない人はたくさんいるので,この文は不適当です」と指摘されました。
はっとしました。
冷静に考えれば,全くその通りなのです。自分が休みだからといって,皆が休みだとは限らない。土日勤務が当たり前という職業はたくさんあるのは知っているのに・・・想像力の欠如も甚だしい。想像力の欠如と勝手な決めつけは,平気で人を傷つけることになるということに気づき,己の鈍感さを恥ずかしく思いました。
学年主任の先生は,偶然にも父の従姉(父は兄弟姉妹も叔父叔母も多く,さらに教員をしている親戚も大勢います)。新任採用されて担当学年が決まってから彼女の名前を知りました。うちの父に一切遠慮することはなく,他の教員に対するのと同様に常に愛情を持って厳しく指導してくれました。言いにくいことを言ってくれる人がいるのはありがたいことです。
また,こんなこともありました。タイ旅行の1日ツアーの帰りに,現地のガイドさんから「タイ式マッサージに寄って帰るか」と聞かれました。一緒にいた友人らは行きたいと言ったのですが,私は興味がなかったので「外で待っているからついて行く」と答えました。すると,ガイドさんは「日本人なのにおかしい!日本人はみんなマッサージをするものよ!」と痛烈に批判してきたのです。じゃあ私は日本人ではないとでもいうのでしょうか?
次々に思い出します。数か月前にテレビで月旅行のニュースを見ていたら,ある芸能人が「月に行きたくない人はいませんよ」と言っていましたが…そうなの?「みんな月に行きたいものだ」という決めつけです。
しかし,こういった「仲間意識」の決めつけが,経済を動かしていると言えます。「日本人は△△のバッグが大好き!」とか「女子なら必見〇〇!」,「みんな大好き□□!」という雑誌の見出しを見れば,「あまり好きではないけれど,1つくらいは持っていてもいいかな」と思って買ってしまうと思います。世の常識的な価値観としてしまえば,売り手は利益を得ることができますから。
何事もいろいろな角度から冷静に,「本当にそうなの?」と批判的に見るようにしないといけません。決めつけをしないこと,そして決めつけの価値観に左右されないことが大事だと思っています。