もう20年ほども前のこと。同僚の音楽の専科教員が「私はいつもこの本を女性への贈り物に使っているのよ」と見せてくれたのがこの本です。
「すてきなあなたに」と題されたこのハードカバーのエッセイ集は,立派な箱のケースに収まっていました。著者の大橋鎮子さんのお名前は聞いたことはなかったものの,「暮しの手帖」は母の本棚で見覚えがありました。
朝ドラ「ととねえちゃん」のモデルになった方の著です。
その先生は,結婚退職や臨時教員の方に贈るのに使われてれいたと記憶しています。その後,「そんなにいいのなら,とりあえず自分用に買ってみようか」と購入。
しかし,自宅の本棚に10年ほど眠ったままでした。題名の「すてきなあなたに」というのが,どうも古めかしく感じられ,「私は別に素敵ではないし」等とひねくれたりして,忙しさにかまけて忘れてしまっていました。
渡米する際に迷った末,「まだ全然読んでいないしなァ…一応」と段ボールに詰めてこちらに持ってきました。
渡米後に初めて開きました…よかった!
日常の何気ない気づきがぎっしり詰まった1冊です。
飾った難解な言葉ではなく,わかりやすい普段使うような言葉で書いてあります。ドラマの主題歌の歌い出し「普段から…」という日本語がぴったりくるのです。それでいて,心の奥深くに響く。大橋さんの人柄がにじみ出ていて,まるで存じ上げている方のように感じるのです。
第一集は,1969年から74年までのエッセイをまとめたもので,昭和50年(1975年)が初版発行。もちろん携帯電話もない時代。「外出先で困った時のために,隣人の電話番号をメモしておくと便利」や「公衆電話を使う時のために10円玉を数枚持ち歩こう」等という知恵も書かれています。今は携帯電話があるので問題ないので,そのような知恵は不要と思うかもしれません。
しかし,隣人は誰なのか知らないという現代において,隣人とよい人間関係を保とうというメッセージがここにあります。
「10円玉を持ち歩く」ということからは,もしものために備えをしておく姿勢が読み取れます。自分には不要でも,外出先で10円を必要としている人を助けることができるかもしれません。
方法論ではなく心の持ちようを書いていらっしゃるので,時代を超えても愛される本なのだと思います。活字以上のものがあるので,デジタル本ではなく紙の書籍としてそばに置いておきたい一冊。
装幀・挿絵は,花森安治さんで当時の編集長でもあった大橋さんのパートナー。
細い線画の挿絵と共に,エッセイのタイトルも手書きですが,この手書き文字がまたよい。漢字など故意に線を一本抜いたり点を加えたりして,ひっかいたようなちょっとガタガタした感じで味と温かみのある文字。やなせたかしさん(アンパンマンの作者)の文字にちょっと似ているかな。
今日(4月23日)は,「世界本の日」(サン・ジョルディの日)。こういう本を贈り物に使っていらっしゃった音楽の先生は,本当に素敵だなと思いました。
是非,多くの方に手に取って頂きたい本です。お近くにお住まいの方でしたら,お貸し致します。

「すてきなあなたに」と題されたこのハードカバーのエッセイ集は,立派な箱のケースに収まっていました。著者の大橋鎮子さんのお名前は聞いたことはなかったものの,「暮しの手帖」は母の本棚で見覚えがありました。
朝ドラ「ととねえちゃん」のモデルになった方の著です。
その先生は,結婚退職や臨時教員の方に贈るのに使われてれいたと記憶しています。その後,「そんなにいいのなら,とりあえず自分用に買ってみようか」と購入。
しかし,自宅の本棚に10年ほど眠ったままでした。題名の「すてきなあなたに」というのが,どうも古めかしく感じられ,「私は別に素敵ではないし」等とひねくれたりして,忙しさにかまけて忘れてしまっていました。
渡米する際に迷った末,「まだ全然読んでいないしなァ…一応」と段ボールに詰めてこちらに持ってきました。
渡米後に初めて開きました…よかった!
日常の何気ない気づきがぎっしり詰まった1冊です。
飾った難解な言葉ではなく,わかりやすい普段使うような言葉で書いてあります。ドラマの主題歌の歌い出し「普段から…」という日本語がぴったりくるのです。それでいて,心の奥深くに響く。大橋さんの人柄がにじみ出ていて,まるで存じ上げている方のように感じるのです。
第一集は,1969年から74年までのエッセイをまとめたもので,昭和50年(1975年)が初版発行。もちろん携帯電話もない時代。「外出先で困った時のために,隣人の電話番号をメモしておくと便利」や「公衆電話を使う時のために10円玉を数枚持ち歩こう」等という知恵も書かれています。今は携帯電話があるので問題ないので,そのような知恵は不要と思うかもしれません。
しかし,隣人は誰なのか知らないという現代において,隣人とよい人間関係を保とうというメッセージがここにあります。
「10円玉を持ち歩く」ということからは,もしものために備えをしておく姿勢が読み取れます。自分には不要でも,外出先で10円を必要としている人を助けることができるかもしれません。
方法論ではなく心の持ちようを書いていらっしゃるので,時代を超えても愛される本なのだと思います。活字以上のものがあるので,デジタル本ではなく紙の書籍としてそばに置いておきたい一冊。
装幀・挿絵は,花森安治さんで当時の編集長でもあった大橋さんのパートナー。
細い線画の挿絵と共に,エッセイのタイトルも手書きですが,この手書き文字がまたよい。漢字など故意に線を一本抜いたり点を加えたりして,ひっかいたようなちょっとガタガタした感じで味と温かみのある文字。やなせたかしさん(アンパンマンの作者)の文字にちょっと似ているかな。
今日(4月23日)は,「世界本の日」(サン・ジョルディの日)。こういう本を贈り物に使っていらっしゃった音楽の先生は,本当に素敵だなと思いました。
是非,多くの方に手に取って頂きたい本です。お近くにお住まいの方でしたら,お貸し致します。
