7月15日の夜,「こんなところに日本人」というテレビ番組を見ておりました。テレビタレントが,周りに日本人はいないという外国の環境で暮らす日本人を訪ねていくという番組です。
訪問者の俳優(長谷川初範さん)がルーマニアの村で出会ったのは,谷崎聖子さんという方。
驚いたのは,「その地方に伝わる刺繍などのクラフトを日本人に伝える」のが彼女のお仕事だったから!その刺繍の名前は,「イーラーショシュ」。長年,この刺繍の名前がわからずにいましたが,こういう名前だったのか…!衝撃でした。
ルーマニアといっても,北西部はトランシルヴァニア地方と呼ばれ旧ハンガリー領。ハンガリー文化が根強く残り,義母の生まれた故郷です。そこに住むうちの親戚はハンガリー人としての誇りを高く抱いて暮らしています。
2007年に主人の親戚を訪ねた際,イーラーショシュというその地方の伝統的な刺繍に出合いました。一目ぼれです!!ざっくりした布に,これまたざっくりした太い糸でこんもりと,しかもぎっしりと目の詰まった刺繍。フランス刺繍のようなエレガントな繊細さを持ったものでもなく,クロスステッチのような規則的で平面的なものでもなく…独特としかいいようがない,あの立体感と素朴さ。実物を見なくても,そのぬくもりが伝わってくると思います。
主人の従弟によると,「ハンガリーの刺繍で,赤いチューリップが伝統的なデザイン」ということ。そして,自分のお母さんが作ったという大きなテーブルクロスを見せ,さらに私にあげると言うのです…。「そのような形見の品は,血のつながりのない私が頂くわけにはいかない」と丁寧にお断りしました。店で買いたいとお願いして,車で連れて行ってもらいましたが,なかなか見つからない。通りに並ぶ露天の一軒でようやくテーブルセンターと花瓶敷きを見つけました!それがこの写真です。テーブルセンターは,(主人がコーヒーをこぼして以来)今はピアノの上にかけて飾っています。
ハンガリーの首都であるブダペストの大きなクラフトモールでも探しましたが,イーラーショシュは見当たりませんでした。フランス刺繍に似た機械でできたようなものはたくさん売ってあるのですが…。やはり,その地方独特の手作り刺繍のようでした。
2009年の2度目のトランシルヴァニアの旅から戻って,あの刺繍の名前は何なのかネットで随分調べましたが,該当なし。絶対に特別なものに違いないと思うのに…日本語では見つからないということは,全く知られていないということなのだろう…やむなく,2010年に書いたエッセイには「ハンガリーの伝統的な刺繍」としました。
それが,今回テレビ番組で知ることになったのです。
世代が変わると伝統は廃れてゆくものだと親戚が危惧しておりました。このテレビ番組で,谷崎さんが伝統を引き継ぎ広めるお仕事をされていることを知って,主人ともども深く感銘を受けました。
谷崎さんは日本の大学でハンガリー語を学び,その後ルーマニア(トランシルヴァニア地方)の大学で現地のご主人に出会って結婚。そしてクラフト紹介や販売を生業にして生活されているということがテレビでわかりました。ネットで検索してみたら,イーラーショシュを習得し刺繍の仕方の本も出版されているということ!!これは,是非買わなくてはいけません!!
トランシルヴァニア地方に行った時も,親戚から手作りのお土産をたくさん頂きました。ビーズのネックレス,木製のペンケースや箱,刺繍のショルダーバッグ,ビーズとリボンでできたしおり,刺繍のブラウスやキャミソール…。手作りが,普通の暮らしの中にあるのです。
谷崎さんのネットショップにも,そういう商品が並んでいました。画面からは伝わりにくいかもしれませんが,かわいいという言葉だけでは表現できない小さな宝物のよう。子どもの頃に,きれいな色の石を見つけて大事にとっておいて眺める…そういう感じかもしれません。
トランシルヴァニア地方は木工も盛んで,それはそれはもうため息の出る繊細さなのです。従弟は木工業などの手仕事をしていますが,街や村のあちこちにも見たこともないようなすごい彫刻が普通に存在している。従弟宅のキッチンで使っていた木製のスプーンやまな板などをほめたら,「持って行きなさい」とたくさんくれるのです。びっくりして遠慮したのですが,「気に入った人が持っておくのがいい」と言われ…それからは何もほめないようにしました(笑)。
トランシルヴァニア地方は,自然がすばらしく豊かで暮らしにも独特の文化があります。日本人は東欧に行くこと自体が少ないでしょうし,ルーマニアに行っても首都ブカレストや観光地(ドラキュラ城のあるブラショブ)などだと思います。実際トランシルヴァニア地方への旅は,なかなか不便なものです。私たちは,ブダペストの親戚の家に寄ってからバスや列車で国境越えをしましたが,言葉もわからないし不気味な感じでとにかく大変でした。
また行きたい気持ちはあるけれど大変だと親戚に訴えたら,「2015年の夏にドイツで会おう」ということになったのです。が,それが白紙になったのは,「メリッサという女の子」というブログ記事の通りです。そして,ミシガンの家にいた時に谷崎さんの番組を観たというわけで,全く不思議な縁です。
最も印象的な旅はと問われれば,間違いなくトランシルヴァニア地方への旅を挙げます。国は豊かではないのに,何かとても満たされるものが確かにある…アメリカに戻って大量生産の品々を見た時,ひどく空しい気持ちになりました。ある年のうちの主人の年始の抱負は,「もっとシンプルな生き方をする」でしたが,それがわかったような気もしました。

訪問者の俳優(長谷川初範さん)がルーマニアの村で出会ったのは,谷崎聖子さんという方。
驚いたのは,「その地方に伝わる刺繍などのクラフトを日本人に伝える」のが彼女のお仕事だったから!その刺繍の名前は,「イーラーショシュ」。長年,この刺繍の名前がわからずにいましたが,こういう名前だったのか…!衝撃でした。
ルーマニアといっても,北西部はトランシルヴァニア地方と呼ばれ旧ハンガリー領。ハンガリー文化が根強く残り,義母の生まれた故郷です。そこに住むうちの親戚はハンガリー人としての誇りを高く抱いて暮らしています。
2007年に主人の親戚を訪ねた際,イーラーショシュというその地方の伝統的な刺繍に出合いました。一目ぼれです!!ざっくりした布に,これまたざっくりした太い糸でこんもりと,しかもぎっしりと目の詰まった刺繍。フランス刺繍のようなエレガントな繊細さを持ったものでもなく,クロスステッチのような規則的で平面的なものでもなく…独特としかいいようがない,あの立体感と素朴さ。実物を見なくても,そのぬくもりが伝わってくると思います。
主人の従弟によると,「ハンガリーの刺繍で,赤いチューリップが伝統的なデザイン」ということ。そして,自分のお母さんが作ったという大きなテーブルクロスを見せ,さらに私にあげると言うのです…。「そのような形見の品は,血のつながりのない私が頂くわけにはいかない」と丁寧にお断りしました。店で買いたいとお願いして,車で連れて行ってもらいましたが,なかなか見つからない。通りに並ぶ露天の一軒でようやくテーブルセンターと花瓶敷きを見つけました!それがこの写真です。テーブルセンターは,(主人がコーヒーをこぼして以来)今はピアノの上にかけて飾っています。
ハンガリーの首都であるブダペストの大きなクラフトモールでも探しましたが,イーラーショシュは見当たりませんでした。フランス刺繍に似た機械でできたようなものはたくさん売ってあるのですが…。やはり,その地方独特の手作り刺繍のようでした。
2009年の2度目のトランシルヴァニアの旅から戻って,あの刺繍の名前は何なのかネットで随分調べましたが,該当なし。絶対に特別なものに違いないと思うのに…日本語では見つからないということは,全く知られていないということなのだろう…やむなく,2010年に書いたエッセイには「ハンガリーの伝統的な刺繍」としました。
それが,今回テレビ番組で知ることになったのです。
世代が変わると伝統は廃れてゆくものだと親戚が危惧しておりました。このテレビ番組で,谷崎さんが伝統を引き継ぎ広めるお仕事をされていることを知って,主人ともども深く感銘を受けました。
谷崎さんは日本の大学でハンガリー語を学び,その後ルーマニア(トランシルヴァニア地方)の大学で現地のご主人に出会って結婚。そしてクラフト紹介や販売を生業にして生活されているということがテレビでわかりました。ネットで検索してみたら,イーラーショシュを習得し刺繍の仕方の本も出版されているということ!!これは,是非買わなくてはいけません!!
トランシルヴァニア地方に行った時も,親戚から手作りのお土産をたくさん頂きました。ビーズのネックレス,木製のペンケースや箱,刺繍のショルダーバッグ,ビーズとリボンでできたしおり,刺繍のブラウスやキャミソール…。手作りが,普通の暮らしの中にあるのです。
谷崎さんのネットショップにも,そういう商品が並んでいました。画面からは伝わりにくいかもしれませんが,かわいいという言葉だけでは表現できない小さな宝物のよう。子どもの頃に,きれいな色の石を見つけて大事にとっておいて眺める…そういう感じかもしれません。
トランシルヴァニア地方は木工も盛んで,それはそれはもうため息の出る繊細さなのです。従弟は木工業などの手仕事をしていますが,街や村のあちこちにも見たこともないようなすごい彫刻が普通に存在している。従弟宅のキッチンで使っていた木製のスプーンやまな板などをほめたら,「持って行きなさい」とたくさんくれるのです。びっくりして遠慮したのですが,「気に入った人が持っておくのがいい」と言われ…それからは何もほめないようにしました(笑)。
トランシルヴァニア地方は,自然がすばらしく豊かで暮らしにも独特の文化があります。日本人は東欧に行くこと自体が少ないでしょうし,ルーマニアに行っても首都ブカレストや観光地(ドラキュラ城のあるブラショブ)などだと思います。実際トランシルヴァニア地方への旅は,なかなか不便なものです。私たちは,ブダペストの親戚の家に寄ってからバスや列車で国境越えをしましたが,言葉もわからないし不気味な感じでとにかく大変でした。
また行きたい気持ちはあるけれど大変だと親戚に訴えたら,「2015年の夏にドイツで会おう」ということになったのです。が,それが白紙になったのは,「メリッサという女の子」というブログ記事の通りです。そして,ミシガンの家にいた時に谷崎さんの番組を観たというわけで,全く不思議な縁です。
最も印象的な旅はと問われれば,間違いなくトランシルヴァニア地方への旅を挙げます。国は豊かではないのに,何かとても満たされるものが確かにある…アメリカに戻って大量生産の品々を見た時,ひどく空しい気持ちになりました。ある年のうちの主人の年始の抱負は,「もっとシンプルな生き方をする」でしたが,それがわかったような気もしました。
