当時は知る人ぞ知るってレベルだったけど
Tはその界隈ではそこそこの有名人でファンもたくさんいました。
もちろんステージ上のTは誰が見てもかっこよくて
一生懸命で
キラキラしてて
素敵だった。
でも…
私はステージ上のTが好きな訳でも
『バンドマン』と言う肩書きだけのTが好きだった訳でもなかった。
本当に彼の全部が好きだった。
ただ一緒に笑い合えることが嬉しくて幸せで…
だからいつも隣に置いてくれる彼の優しさに甘えていた。
彼の立場も考えず周りなんて気にもしてなかったし何も見えてなかった。
普通の『彼氏・彼女』だって思ってた。
勘違いしてた。
ファンの女の子たちにとって
私の存在というものはとても疎ましく
邪魔でしかなかったんだろう。
まだ何も気にせずにTのライブを観に行ってた頃
ライブ会場でTと離れ一人になると大人数に囲まれたり
すれ違いざまに服を切られたこともあった。
いくら鈍感な私でもいい加減色々と考える様になり身の危険も感じ始め…
なんやかんや理由を付けては徐々にTのライブには行かなくなった。
本当は観たかったけど…
厳密に言えば
行けなくなってしまった。
私がTと一緒に居れば
嫌な思いをする人がたくさん出てくる…
彼にも迷惑がかかる。
現に私が原因でファンと揉めたり
『ココちゃんが来ないから歌いたくない…』等と言ってはメンバーを困らせることもあった。
『みんなのT…』
それは私とTが出会うずっと前から
彼のことを応援してきたファンの一人から言われた言葉だった。
おそらく私より年上だと思われるその女性は一人で私のところにやってくると
大事になるのを避ける為か
『ちょっといいかな?』
と、人目の少ない場所へ私を連れ出した
そして
とても落ち着いた口調で
『Tが誰を好きだろうと誰と付き合おうと仕方のないことだし関係ないって言われるとは思うけど…
あなたと同じ様に…この場所に来ているみんなはTのことが大好きで…ずっと支えて来たんだって自信を持って言える人たちなのね。
バンドなんてファンが居なきゃ成り立たない。
今、Tがステージに立てていることもみんなが支えて来たからなの。
Tはあなたの彼氏かも知れないけれど…
みんなのTでもあるんだよ。』
と…言った。
今の私だったら
『知らねーよ。』
って流してしまうかも知れない。
しかし
当時の私はまだまだ子供で経験値も少なく
幼さ故にとても病んでしまった。
『Tのことが大好き。
離れたくない。
一緒にいたい。
でも…私がいるとTはみんなに嫌われちゃうかも…。
大好きな歌も歌えなくなって
ステージに立てなくなってしまうかも…
そんなの…絶対に嫌だ。』
私の存在が在ることで
Tの夢を壊してしまう。
色々な思いと葛藤…
Tの夢は私の夢でもあったけど…
一緒に叶えることは無理なんだと思った。
続く