ねぇ…
私とTの始まりの日も今日とよく似た
こんなシチュエーションだったよね。

公園のベンチに座って手を繋いで朝まで色んなこと話したっけ。
懐かしいね…

でもね…
まさかこんな日が来るなんて思ってもみなかった。

確証も自信も約束も…そんなもの何ひとつなかったけど
私にはそんな目に見えないものなんて必要じゃなかった。



彼がそこに居ることが全てだったから。



ただ…
あなたとはずっと一緒に居られる様な
そんな気がしてた。





ねぇ…
ずっと一緒に居たかったよ。






『このまま一緒に居てもいいのかな…?』



一瞬、私の中でそんな思いが過ぎった。



でも…決めたことだから…ね。



私はその思いを必死に払拭すると
涙を拭いてベンチから立ち上がり



『帰ろっか!』



とTの手を引いた


座ったまま
なかなか立とうとしないTの首に手を回し彼のサラサラで綺麗な黒髪を撫でた。




『ねぇ…T…ありがとう…』




本当は『大好きだよ』って言いたかったけど…


その言葉を言えば振り出しに戻りそうだったから…一生懸命飲み込んだ。


言いたかったけど言えなかった
『大好き』
って言葉の代わりに…
私は自分が身につけていたジャスティンのネックレスを外しそれをTの首元に着けた。

まるで彫刻の様な美しい彼のデコルテ。

血管が透き通る肌の白さと
くっきりと浮かび上がった鎖骨にそれはとてもよく似合っていた。




俯いたままだったTは
ネックレスに触れながら
顔を上げると私の目を真っ直ぐに見つめ



『これで最後にする…
もう一度だけ聞かせてよ…


ココちゃんと僕は…
本当にもう無理なの…?』



って小さな声で私に聞いた。



『…うん…』



私がそう言いながら頷くと
Tは大きく息を吐き
ベンチから立ち上がり



『…分かった。帰ろっか!』



って私に向かって左手を差し出した。


私は彼の手を取ると
しっかりと手を繋ぎ
公園の階段を下り駅に向かって歩き出す。




『ホームまで送るね。』


『Tは電車に乗らないの?』


『…ほら…ここからだと僕の方が先に降りなきゃいけないから…
見送られるのは嫌なんだ。
僕は次の電車に乗るよ…。』


『…うん。分かった…』



ホームに到着すると
ちょうど電車が入ってきた



『じゃあ…私…行くね…』


『うん……あ!ココちゃん…!!』


『なに?』



電車のドアが閉まる直前まで繋いでいた手が離れる…
Tは目に涙をいっぱい溜めながら
小さく手を振り…



『ココちゃん…!またね!!』



アナウンスが流れると
扉が閉まり走り出す電車の車窓から見えるTの姿はどんどんどんどん小さくなって…
直ぐに私の視界から消えて見えなくなってしまった。





最後の言葉は



『バイバイ』



じゃなかったね。




電車の中一人になった私は

泣きたくないのに

涙が勝手に溢れて

止めたいのに

止められなくて

どうしようもなかった…




続く