2020年ノンフィクション本大賞
ノミネート作品2冊目
つけびの村
噂が5人を殺したのか?
著:高橋ユキ
読み終わりました

著者の霞っ子クラブや木嶋佳苗の書籍は以前読みましたが、今回はだいぶ文体が重くなっています

噂話が好きな人はいますよね。私が子供の頃も井戸端会議が盛んでしたし、今でも幼稚園の送迎でよく見る光景。←登園は仕事、降園は習い事の時間に追われて、和に入らず済んでいますが、HSPは逃げ道が無いとお付き合いは大変です

それが人里離れた娯楽の少ない小さな集落の村なら、尚更のこと。
今のSNS叩きは、ストレス発散なのか暇なのか知らないけれど、知り合いとしていた噂話や悪口が、人ではなくネットを通して一方通行になった進化系ですね。いつの時代も、一定数こういう人はいるので、いじめと同じで無くならないのでしょう

私自身、人との付き合いは一線を引いていますが、ご近所さんの中には他所の家のことにやたら詳しくて、「○○さんの家の息子さんは○○で働いてる」とか、やたら言いふらす人もいる。そんな話を聞くと、我が家のこともどんな風に言われて、どこまで広がっているのか恐ろしくなる

本書で取り上げられた犯人は、父と同世代で、中卒で上京して、40代で地元に戻っています。
父は高校卒業と同時に富山県の田舎から上京した団塊世代。
当時世の中では「金の卵」ともてはやされていましたが、親戚から「お父さんは、食いぶちを減らすため仕方なく上京した、可哀相な人」と娘の私に言ってきたことがあります
田舎らしい言い方に、私は言葉もありません。

「長男が偉い」の風習が根深くあり、父は代々続く農家の5人兄弟の末っ子。20歳離れた長男一家と同居でしたが、長男の息子と年もあまり離れていません。兄弟の中で唯一高校を卒業しようが、ずっと見下されて育ち、上京して方言を罵倒され田舎者扱いされ、でも帰る実家は無く耐えるしか無かった。
女なんて、私の従兄弟世代でさえ、家の格が違うからと恋人と結婚させてもらえなかったり、子供ができないことで親戚中から攻められたり
私や母じゃ考えられない世界です。

父のことを「根暗」と母は言っていましたが、育った環境でアイデンティティが決まっていくことがよくわかります。
私も繊細さんだから、色々と考えちゃう時があって自分のことを暗いなぁと思うことも多々ありますが…普段言いたいことが言えない父の日記を亡くなった後に少し読みましたが、私の想像を超える暗さで闇でしかなかった

しかし田舎を離れた父は、遺産相続も放棄したので、ドロドロの骨肉の争いには巻き込まれずに済みました。父以外の親戚の家は徒歩圏内にあるのに、今は本家と分家の交流が一切なくなり、法事にも呼ばないほど。
本を読んで色々と思い返してみると、田舎の付き合いは、私が考えている以上に近く狭く、噂話や悪口だって娯楽の1つで、元々お互いに不満を抱えながら無理して付き合っていたから、キッカケがあれば今の時代ではこうなるでしょう。
今でも、叔母から電話がたまにきますが、遺産相続で独り占めした本家が没落していくことを嬉しそうに話す叔母に、背筋が凍ります。←方言が酷くて、言っていることの3割程度しか理解できないのが不幸中の幸い。
人との距離感って大切だなって思います。