マウロとレドリー | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。



数あるブログの中から閲覧ありがとうございます。

 

こちらのブログは

ワールドネバーランドエルネア王国の日々をプレイし、それをもとに書いています。

 

プレイした際のスクショをもとに書いておりますが創作(妄想)も多くございます。

 

創作話が苦手な方は閲覧お控え下さい。




セシリア
「また寂しくなるね……」

啜り泣く声が聞こえるモリエンテス家。

マウロがガノスに逝ってしまったことを、モリエンテス家の前で佇んでいたセシリアとレドリーが悟った。

レドリー
「うん……」


セシリア
「最後の挨拶、ちゃんとできた?また喧嘩してない?」

不安げにレドリーに聞くと、レドリーは困ったように笑った。

レドリー
「喧嘩はしてないよ——たぶん。」
  

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
時は遡る。


レドリーは夕刻、モリエンテス家に見舞いにやってきた。

いつも余裕そうな顔のマウロが、ベッドの上で横たわり苦痛に顔を歪めている。


レドリー
「……マウロ」

辛そうな友人の姿に息を呑む。

レドリーの訪問に気づいたマウロはゆっくりと起き上がるとフッと笑った。


マウロ
「そんな顔やめろよ。王配殿は、俺みたいな邪魔な国民が死ねばせいせいすると思ってるんだろう」

レドリー
「あのなぁ……」

レドリーは大きなため息をついた。

最後の最後まで、マウロはレドリーに対して悪態をつく。こいつはこういう奴だ。

「お前……早すぎるだろう。まだお前の力を貸してほしいのに。」

1国民でありながら、マウロの知識は国に貢献するほどのものだった。

特に魔銃師会はマウロの恩恵を受け、薬の精製の質が向上した。
前は一部の特に優れた魔銃師でなければ出来なかった調合をマウロの手ほどきで少し調合をしたことがある魔銃兵でもできるようになった。

マウロの教えたことは今後の魔銃師会を支えてくれるだろう。

レドリーは長年マウロと仲が悪かった。

マウロもレドリーをよく思っていない。

マウロがセシリアの要請で手を貸してくれるようになって、国のために時間を割いてくれている。

その事実だけで王配としてのレドリーはマウロに礼儀を尽くすべきだろう。

長年仲が悪かったのだから、これくらいで相手を好きになるのは難しい……が。

ーーヴェルンヘル陛下なら国益のため、私怨を抑えるだろうな。

かつて、俺の父ティアゴ・バーナードに思うことがあっても国のために2人は密に連絡を取り合い、情報交換して、父は自分の知識を魔銃師会に残すために努力していた。

『レイラさんは、ほとんど俺に知識を残していっていた。だから、俺がみんなに伝えなきゃならない。』

死期を悟った父は、レイラさんや、親友ローデリックさんの死を悲しむ暇もなくこれまで以上に忙しく働いていた。

マウロがその時の父と重なった。

セシリアがマウロに頼み事をしてあっさりと承諾したと聞いた時から、マウロが長生きしないようなそんな予感はしていたんだ。

『俺はセシリア様に買われた身だからね』

マウロはこんな風にふざけた返答をしていたけどな。


マウロ
「モリエンテス家にある魔法に関する蔵書は、魔銃師会に寄贈した。」

レドリー
「いいのか……?大事な本だと聞いていたが」

マウロ
「同じ本があるから気にするな。これで魔銃師会は大丈夫だろう。今はスピカ様もおられるしな」

王家嫌いらしいモリエンテス家だが、
マウロはスピカに対してはそのような気持ちがないらしくむしろスピカを敬っている節がある。

マウロから当たりが強いのはラウル三兄弟の中でも長女であるセシリアのみ。

(マウロの考えてることはよく分からないな)

色々思うところはあるが、レドリーは王配としてマウロに礼を言う必要がある。

レドリー
「………エルネア王国の王配として、マウロ殿に御礼を申し上げる。本当にありがとうございました」

ペコリと頭を下げた。


マウロ
「別に……俺はセシリア様に貰った金の分だけ働いただけさ」

レドリー
「……………… その、ことだけど」

マウロ「?」

レドリー
「マウロは金に困っていないのにどうしてセシリアに金、金と要求するんだ」

マウロ
「金はあって困るものじゃないだろう」

レドリー
「素直にセシリアの言うことをきくことがモリエンテス家に言い訳しにくいから、金をもらう代わりに要求に応じている……そんな風に見えるんだが」

マウロ
「はあ?なにを言って……」

レドリー
「セシリアからの要求に対して、自分に対価を支払わせる。お前はセシリアの要求を呑むことを正当化できて堂々とセシリアの依頼を請け負うことが出来る」

マウロ
「どちらも損をしない、win-winな関係ってやつだ」

レドリー
「そう言えばそこにマウロの感情は介入していない、そう思わせようとした」

マウロ
「セシリア陛下とはビジネスの話をしていた。お互いの感情など必要ないだろう」

少しの間、レドリーとマウロの視線が重なり沈黙が流れた。


(これが、最後……マウロの口からもう少し聞きたい)

目の前にいる、金の欲に取り憑かれたふりをしている男。

レドリーは使うつもりのなかったカードを切ることにした。


レドリー
「……お前、セシリアが成人した時、天使みたいだって言ってたよな。覚えてるか?」

セシリアは王太女。

国中の人々がセシリアがどんな女性へと成長するかと注目していた。

セシリアから熱烈なアプローチを受けていたレドリーも同じかそれ以上にセシリアの成長した姿を見たいと思っていた。

そんなレドリーが、セシリアに対する感想を聞き逃すわけがない。

成人式が終わりエルネア城から出てくるその姿をレドリーは見ていた。周りには数人のレドリーの同級生。


『まるで天使のようだ』

ぽつりと呟かれた感想は、本心だろうと思った。

レドリーも同じ感想を抱いていたからだ。

呟いていた人物がマウロであったことが意外であったことをレドリーはよく覚えていた。


マウロ
「——さあ。人違いじゃないか」

流暢に話していた男がスッと視線を逸らした。

(人違い……)

認める気がない男をじっと見る。レドリーの中で疑念から確信へと変わっていく。

(……嫌っていたのは、ヴェルンヘル陛下のみ…)

レドリー
「セシリアを嫌っていたって話本当は——」

マウロ
「レドリー」

静かに、しかしはっきりとして口調でマウロはレドリーの言葉を制止する。

マウロの青い目がレドリーをじっと見据える。その視線にレドリーは若干の動揺を見せたあと、

レドリー
「————いや、なんでもない」

そう言って、視線をマウロから外して窓の外に向けた。

窓の外は夕焼けが少しずつ光を失ってきていた。

これ以上踏み込んではいけない。

さっきまでしていた質問を再びすることはなかった。


マウロ
「お前は少しでも長生きしろ。セシリア陛下のためにも」


レドリー
「努力する……」
(セシリア陛下のためにも、か……)

気にするのはセシリア陛下か。
国民としての当然の感情なのか、それともべつのものなのか。


マウロ
「それじゃあな」

片手をあげ、時折苦しげに歪んでいた顔がいつもの不敵な笑みを浮かべている。

これがレドリーのよく知るマウロ・モリエンテス。



レドリーとマウロはこれが最後の会話になった。



゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

先客がいる。

話を聞くつもりはなかった。

聞こえてきた話に、セシリアは驚き、そっと階段を降りた。


————天使みたいな女の子だって思ってたのに実際は違ってドン引きして
推せなくなった、とかそーゆー理由で嫌われた??

横恋慕したのがどうのこうのって前にマウロさんが言ってたみたいだからそれ?

王太女がそんな事をするなんて、ってこと??


セシリアは頭の中でぐるぐる考えた。
考えすぎてよく分からなくなった。

セシリアの横恋慕の話は当たっている。

マルティナという彼女がいたレドリーに告白したことでセシリアの国民からの好感度は急降下した。

自業自得だった。


「セシリア」

モリエンテス家の前でぐるぐる考え続けていると声をかけられる。

セシリアをセシリアと呼ぶのは数少ない人間だけ。

夫のレドリーが立っていた。

見舞いが終わったようだ。

レドリー
「セシリアもあいつの見舞い?」


セシリア
「あぁ、うん……でも、迷惑かなー……」

考えがまとまっていないのでどうしようかと思案する。


レドリー
「マウロに会ってやって。あいつは喜ぶと思う」

真剣な眼差しで言われ、セシリアはコクリと頷いた。

セシリア
「うん……分かった」

(——レドリーさん、いつになく真剣……
マウロさんが関わると嫌な顔をするのに……

今日で最後だもんね……
好き嫌いとか言ってられないか)


セシリアはモリエンテス家に再び足を踏み入れた。