任天堂スイッチ版エルネア王国をもとに書いています。
15日
バルナバはリリーとほとんど会話しないまま、リリーとの試合当日を迎えた。
年末はあんなに楽しみにしていると二人で言い合ったというのに
こんな気分で当日を迎えるとは..
バルナバはため息をつきながら坑道に入る。
優れない気分のままでいると、ポニーテールを揺らした女性が目の前で立ち止まった。
バルナバはゆっくり顔を上げる。
リリーだった。
バルナバ
「....リリーちゃん?!」
お互い気まずいまま、酒場であってもほとんど話もしなかった。
一体、なんの用だろう..そもそも俺に用があるのか?

リリー
「今日の試合負けないからね!」
バルナバ
「?!」
バルナバは驚いてリリーを見つめた。
ーー確か四年前も同じことを言われた。
リリーがジッと上目遣いでバルナバを見つめる。
バルナバの反応を、待っている..
バルナバ(上目遣いとか反則だよ…)
リリーなりに、気をつかって話かけにきたのかもしれない(言ってる台詞はあれだけど)
バルナバ
「こ、こっちこそ負ける気がしないね」
リリー
「お互い手加減なしだからね」
バルナバ「望むところだ
試合で会おう!」
リリーはフッと顔を緩ませた。緊張が解けたように身体の強張りをといて、バルナバを見ていた。
リリー「試合、楽しみにしてるね!」
穏やかな笑みを浮かべた。
バルナバ「俺も楽しみにしてるよ」
2人は久々に笑顔で話をした。
リリーが坑道を去っていくと、視線に気づいた。
ティム「お父さん、良かったね」
バーニー「今回はこのやりとりみれないかと思った」
バーニス「試合前の名物だもんね!」
三人はにやにやしていた。
バルナバ「...どっから見てた?」
ティム「はじめから」
バーニー「バルナバさんがしょぼくれてる所から?」
バルナバ「.....」
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リリーはバルナバに会ってからすぐに自室に戻った。
薬を追加して飲むが、吐き気が止まらない。
どうして今日なの..
お願い、私の身体...
今日一日もって...
リリーの視界がぐらりと揺らいだ。
☆
リンゴが酒場にいくとXさんが旅人となにか話をしていた。
こちらの視線に気づいて旅人の女性がペコリと頭を下げた。リンゴも頭を下げる。
X「リンゴちゃん、ちょうどいいとに。こちら、私が昔からいた国の友人の娘さんのミーシャさん」
ミーシャ「ミーシャと申します」
ミーシャは目の大きい可愛らしい女性だった。
リンゴ「こんにちは、リンゴ・フォードです」
X「さっき言った、騎士隊隊長さんの娘さんのリンゴちゃんよ」
Xがミーシャに説明している。
X「ミーシャが国からロザン中和薬を届けてくれたの」
リンゴ「本当ですか??!」
リンゴは目を輝かせた。
騎士隊隊長居室
入ってすぐ違和感を感じた。
リンゴ「え?」
奥の部屋に入ると、鎧姿のままのリリーが口から血を流して倒れていた。
リンゴ「お、お母さん?」
リンゴはリリーに駆け寄って、抱き起こした。
リリーが目をうっすらと開ける。
「...リンゴ?」
リンゴ「お母さん、大丈夫?!しっかりして!今日試合なんだよ!楽しみにしてたバルナバさんとの試合だよ」
リリー「試合、無理みたい..バルナバと、最後に戦いたかったな..」
リンゴの腕の中でリリーの力が抜けていく気がした。
リンゴ「お母さん!Xさんが知り合いにお願いして、薬を手に入れてくれたの!ロザン中和薬!
短い時間だけど、瘴気の影響をほとんど感じない薬だよ!これがあれば試合ができるよ!」
リリー「..みんなには迷惑かけてばかりだね」
リンゴ「そんなこと気にしないで..試合直前になったら飲もう。効能は、一刻くらいしかもたない」
リンゴはリリーの口元や鎧についた血を拭き取った。
時間は瞬く間に試合の時間を迎える。
薬を飲むと、リリーの身体は健康な時と全く変わらず軽やかだった。
ローゼル近衛騎士隊隊長 リリー・フォード
ドルム・ニヴ山岳兵団団長
バルナバ・マルチネス
鋭い攻撃が繰り出される。
リリー「...!!!!!(バルナバ、強くなってる!)」
バルナバは歯を食いしばり攻撃を受け止める。
そして
決着がついた。
隊長就任以来、負けなし、龍騎士のリリー・フォードがついに、王立闘技場の地面に、膝をついたのである。
バルナバ「.........!」
バルナバは信じられないという様子で膝をついているリリーを見つめた。
一瞬、静まり返ったあと、どよめきと大歓声が闘技場に響き渡った。