彼女は破竹の勢いで仕事の成績を伸ばしていく。
この仕事に携わる全ての人が注目を始める。
そこへまたN支店から割り込みの形で指名された。
派遣会社はスケジュールの調整して彼女をN支店へ送った。
そこに待っていたのはF銀行の後輩としての支店長だった。
『公的資金も返済のめどがつき、たくさんの新入行員が入ってきたが指導する力はない…貴女の接客力~セールス力を後輩に教えてほしい』
という支店長の頼みだった。
彼女は新入行員指導として派遣された訳ではなかったのだから銀行本部は業務は認めるが時給は支払わないという方針を打ち出した。
時給で働く派遣に無給で能力の是非を確かめるのか…
本来業務ではないから~時給は無しでやれという暗黙の回答だった。
N支店はもはや支店長が自らを彼女の後輩と位置付け派遣の彼女の軍門に下ったのだった。
当日から彼女は3交代制のシフトで敬語もろくに使えない~まして銀行業務の何たるかも理解していない6名をATMコーナーで接客させるのだった。
怯える新入行員に銀行業務とは『お客様の資産を預かる事』から始まり、
正しい接客、M銀行の信頼に値するセールスを教え込む。
M銀行からN支店から…またM銀行に入れるために我が子にかけた新入行員の親の気持ちを守るために、あらゆる方法でそれぞれ6名の新社会人生活を預かるという気概にN支店は全面バックアップを昂じてくれた。
毎日数時間の残業。
しかし無給とはいえ手抜く事は許されない。
手を抜けば新入行員の銀行員生活に汚点を残す。
2週間新入行員を育てながら彼女はノルマをこなし、また新入行員にも成績を与える。
いよいよ別れの最終日。
新入行員は既に彼女を『ママ』と呼び、
後日N支店の支店長のみならずM銀行の常務賞まで獲得するのだ。