不思議な魅力を持ったその人に出逢えたのは、あるパーティーだった。
類い稀なる美貌を持つ訳でもないのに華を感じた。
黒いシンプルなパーティードレスのその人は彩り鮮やかなパーティードレスを着た女性の中に居ても異彩を放っていた…
彼女自身が華やかさを持っている!
主催者である上場企業の役員にそっと尋ねた
『あの彼女は?』
『ああ落語家で三木助さん…知ってる?彼のお姉さんだよ』
と答え手招きで『しげちゃん』と声をかけ彼女を呼んだ。
まさかその人が今の世相そのままのたくさんの経験をした女性だとは~
その時私は知る由もなかった。
間近で見る彼女は確かに美しい、鎖骨の美しさが一層彼女を際立たせる。
それを充分意識したドレスを選び着こなしている。
『さすがに芸能人のお姉さんですね』
と言うと含み笑いのような笑みを浮かべ
『ちょうど一服したかったんで、あちらに行きません?』
タバコを吹かす仕種をして椅子のある方向を見た。
私は興味津々で彼女に頷いた。
『ずっと幸せな人生だったのでしょうね』
と話しかけると彼女はタバコに火を点け
『えっ?そんな風に見えます?
私最近使い捨て派遣も経験して、あっせん、労働審判と闘い…
法律って企業のためにあるのかを体験したし、PTSDにもされたし弟の自殺もあったし…
セクハラ等ほとんど今社会で問題になっている事、実体験した世相のモルモットなんですよ』
彼女の口から軽く語られる言葉はますます私の興味を引いた。
『どんな派遣されていたんですか?』
『大手銀行でインストラクター…
それもスーパーまで付くスーパーインストラクターだったんです』
言われれば彼女に相応しい仕事だった。
しかし大手銀行のスーパーインストラクターが使い捨て派遣は意外だ。
『何故?』
『話すと長くなるから』
でも私は興味津々だった。
連絡先を聞き近々話しを聞きたいと言うと彼女は了解してくれた。
この不思議な雰囲気を持つ女性は、ただ者じゃない
という残り香を与え会釈してパーティーの終わりを迎えた会場に戻って行った。
たくさんの人の輪の中で尚一層彼女の存在は私の目をくぎづけにした。