アマゾンプライムビデオで、映画を見ました。

Aというドキュメンタリー映画。


内容は、1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教を取材したものです。

特に、公報を担当していた荒木という人物を中心に、そこから見える世界を映しています。


見ていて感じたのは、世間の汚さ。

荒木の外部に向けての顔と、内側への穏やかな顔のギャップ。


色んな欲を秘めながらも、正義と世間の声を傘に着て絡みついてくるマスコミ、それから仲間を守る荒木。

目的のために手段を問わず、権力を振りかざす警察。

人々は、相手の立場が弱いと見てとるや、まるで足蹴にするような対応をしてきます。


映画の後半で、広報担当になってどう感じているか問われた荒木がポツリと、

「出家したいですね。もうしてますけど、もう一度」

と答えます。


ここまで、穏やかで清らかな出家生活を送りたい人々と攻撃的で欲まみれな世間、という対比を見せられてきて、思わず共感しそうになります。



視聴者である私のその感情に歯止めをかけたのは、当時の記憶でした。

松本サリン事件と地下鉄サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件など、そのニュースがいかにショッキングなものだったか。

それらの事件は、オウムの組織の性質がなければ発生し得ないものでした。


世間はオウムを忌避して排除しようとしていたけれど、実際のところ宗教組織からテロ集団に変貌していたことを考えれば、それは当たり前の状況でした。



この「A」というドキュメンタリー映画は、内部から見た世界のみを映しています。

公開は1998年。

事件の記憶が色濃かった時代には、それも良かったかもしれない。


対して、2023年の今。

事件後に生まれた人たちが社会人になるくらい、時が過ぎました。


当時の衝撃を知らない世代がこの映画を見てどう感じるのだろう。

とても大きな危惧を覚えました。


オウムに関しては、個人的に関心があって、事件後に書かれた本を数冊読みました。内部視点の本もあったけれど、この映画ほど美しいものでは無かった。


今これを見せるなら、同時に事件についても伝えて欲しいなぁと思います。

色々な意味で、深く心を揺さぶられる、辛い映画でした。