瞳がブルーがかった、グレーで
潤んでいます
肌は白くて、
透き通るようです
小さな体は
前かがみになっていて
歩き方は、おぼつきません
それは、とても美しい妖精でした
雪国で、よく見かける色合いをしていました
わたしは、雪国である八戸を
久しぶりに歩いていたのです
なんとも歩きにくい歩道
前を歩く、おばさんは、そんな歩道を避けて、
車道の端を歩きます
交通量がそんなに多くない、
地域の道路ですから
安心しながら、後ろを歩きますが
それでも、
スピードを出している車がいたら
「ドキッ」とします
こんな歩道だもの
雪の溶けた車道を歩きたいですよね
高齢であれば、なおさら
足元がおぼつかぬのに
雪道の歩道を歩くのは
転倒する危険性が高いですから
転倒して、怪我でもしたら
怪我の治りが悪い
家族に迷惑をかける
いいことがないことは
明らかですから
買い物を済ませると、
その妖精がいました
自分で買い物をした
たくさんの八朔を
袋詰め台に忘れたまま
スーパーを出ようとしているのでした
店員さんが気づき
その、一袋にも収まらないほどたくさんの八朔を
持たせながら
心配そうに見送っていました
「彼女、ここに来る前、
車道の真ん中を歩いていたんだよね」
スーパーで会った知人が教えてくれました
私は、会計を済ませ
スーパーを出て歩き始めましたが
私と反対方向へ歩く、
その彼女が気になって気になって
仕方ありません
だって
車道の脇を歩いているのですから
しかも
袋いっぱいの、オレンジ色の八朔を持って・・・
後を追いかけ
「おばあちゃん、重いでしょう。
おうちまで、持ってあげるよ」
彼女は、近いから大丈夫、って
断ったけれど
「ううん、持つよ
重いでしょう。
こんなに、いっぱい」
彼女は、私の顔を見上げました
瞳がウルウルとして
ブルーがかったグレー色で
色が白く
その透明感に
「ドキッ」としました
まるで、妖精のような、透明感でした
私は、彼女に
認知症になった、我が母を映していました
対向車は、
なだらかな下りのカーブを
スピードを出して走ってきます
彼女と私とを認めると
大幅に湾曲してくれ
避けて通ってくれます
交通量は
少なくありませんでした
私は、彼女を歩道側にして歩きながら、
ドライバーの方々へ
「すみません」と
会釈をします
雪道の歩道
歩いてみなければ、
こんなに歩きづらいものなのだとは
気づきませんでした
車に乗っているだけの私には
気づかないことでした
ドライバーの皆様へ
先を急ぎたい
取引先に間に合わない
急いでいる
いろんな理由があるのは
私もよくわかります
けれど
歩行者がいたら
少しだけ
歩行者の気持ちに心を傾けて
少しだけ
速度を落としてあげられる余裕
少しだけ
思いやる心を
そんな風に思わされました
それは
自分だけが歩きづらかったからではなくて
瞳の美しい
透明感のある妖精さんに
出会ったからです
思いやるって感情は
大切なことだなって
わが身にも戒めた雪の日でしたとさ