「人を恋うる歌」与謝野 鉄幹

https://youtu.be/-VZqpk268F4

https://youtu.be/Mg6MZ__FM_w

1.妻を めとらば 才たけて みめ美わしく情けある友をえらばば書を読みて 六分の侠気 四分の熱

2.恋の命をたずぬれば 名を惜しむかな男ゆえ 友のなさけをたずぬれば 義のあるところ火をも踏む

3.汲めや美酒うたひめに 乙女の知らぬ意気地あり 簿記の筆とる若者に まことの男君を見る

4.あゝわれコレッジの奇才なく バイロンハイネの熱なきも 石を抱きて野にうたう 芭蕉のさびをよろこばず

5. 人やわらわん業平が 小野の山ざと雪をわけ 夢かと泣きて歯がみせし むかしを慕うむら心

6. 見よ西北にバルカンの それにも似たる国のさま あやうからずや雲裂けて 天火ひとたび降らんとき

7. 妻子忘れて家を捨て 義のため恥を忍ぶとや 遠くのがれて腕を摩(ま)す ガリバルディや今いかに

8. 玉をかざれる大官は みな北道の訛音(なまり)あり 慷慨(こうがい)よく飲む三南の 健児は散じて影もなし

9. 四度玄海の波を越え 韓(から)の都に来てみれば 秋の日かなし王城や 昔に変る雲の色

10. あゝわれ如何にふところの 剣は鳴りをひそむとも 咽ぶ涙を手に受けて かなしき歌の無からめや

11. わが歌声の高ければ 酒に狂うと人のいう われに過ぎたるのぞみをば 君ならではた誰か知る

12. あやまらずやは真ごころを 君が詩いたくあらわなる 無念なるかな燃ゆる血の 価少なき末の世や

13. おのずからなる天地(あめつち)を 恋うるなさけは洩らすとも 人をののしり世をいかる はげしき歌をひめよかし

14. 口をひらけば嫉みあり 筆を握れば譏(そし)りあり

友を諌めに泣かせても 猶(なお)ゆくべきや絞首台

15. おなじ憂いの世に住めば 千里のそらも一つ家 己が袂というなかれ やがて二人の涙ぞや

16. はるばる寄せしますらおの うれしき文を袖にして きょう北漢(ほくかん)の山のうえ 駒立て見る日出づる方

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