シーク寺院 | ライオンシティからリバーシティへ

シーク寺院

行きつけのインド美容院 の担当者が、シーク教徒のパンジャブ地方出身の女性だ。


シンガポールは南インド、タミール地方出身者が多い。彼女も、多分、そうだろうな、と思っていたら、違った。独身女性で、一人で出稼ぎに来ている、という。


確かに、タミール人と比べると、色が白めで、眼の色が薄く、骨格ががっちりしている。タミール人が大声で明るくしゃべるのと比べて、ささやくように優しく話す。


朝から晩まで美容院で働いているが、通勤前には、必ず、シーク寺院に寄ってお祈りする、という。


シーク教のこと、昔、歴史の教科書であっさり習った以上のことは何も知らない。


せいぜい、頭にターバンを巻いて、ラッフルズホテルの守衛をしている大男がシーク教徒だということくらい。


そういえば、ロンドンのシティのトレーディング・ルームにも、やはり、大柄でターバンを巻いたトレーダーがいたな。彼もシーク教徒だったんだ。


何事も、知るのに便利なシンガポール。早速、近所のシーク・センターに。
シンガポール シナイ山から


シーク教は、16世紀、インド北西部のパンジャブ地方でグル・ナーナクが創始した宗教。唯一絶対の神を信じ、人類の平等、異なる宗教の一体性、神の言葉(経典)に対する信仰などをその教義とする。宗徒は、パンジャブ地方を中心に、2000万人ほど。シンガポールには1万8000人いる。


タバコ、アルコールの禁止、菜食など、戒律は厳しい。が、カーストの否定、男女の平等、勤労の奨励(出家の否定)、生贄の否定など、合理的で人間にやさしい宗教という側面もある。


男性がターバンを巻いているのは、シーク教が髪の毛を切ることを禁じているから。5~7メートルのターバンをくるくる巻き、あごひげをフサフサ生やしている様子は、神秘的なインド人のイメージにぴったり。


子どものターバンも、可愛い。
シンガポール シナイ山から


女性も髪を伸ばしてヴェールをかぶるが、ふわっとケープを巻くスタイルで、髪の毛を完全に隠すマレー・モスリムのスタイルとは一線を画している。



シンガポール シナイ山から
そう、これは、故ベナジール・ブット・パキスタン首相。彼女は、モスリムのパキスタン人で、シーク教徒のパンジャブ人ではない。だが、服やヴェールの巻き方は同じ。宗教はちがえども、パンジャブ人とパキスタン人は、文化的には、とても近いそうだ。



ちなみに、パンジャブ地方は、パンジャビ・スーツの本場。シーク教徒の女性は、サリーを着ないし、ビンディー(結婚した女性が額に付ける印)もつけない。


礼拝所は、モスリムのモスクにも似た、絨毯敷きの広いスペースだ。


平日の昼間でも、沢山の人が礼拝に来ていて、敬虔にお祈りしている。若者が多い。


全員が、ターバンを巻いた顎鬚の男性は、必ずしも多くない。ただ、ターバンでない男性も、礼拝所では、皆、バンダナを頭に巻いているのが、他のどの宗教とも違う。


祈りの場所は、とくに男女に分かれていないようで、混ざっている。


祭壇で教典を詠む人。
シンガポール シナイ山から

シーク音楽の実演も、初めて聞いた。素敵な音色にうっとり。


シンガポール シナイ山から

そして、食事。シーク・センターでは、毎食1000人分の食事を作っていて、訪問者は無料でいただける。すべて、寄付とボランティアでまかなわれているそうだ。


チャパティを作り、
シンガポール シナイ山から


焼いて、
シンガポール シナイ山から

食べる(チャパティと、黒豆カレーと、じゃがいものザブジ、ヨーグルトとライス。ちょっと機内食みたい?)
シンガポール シナイ山から
そのほか、シーク・センターには、パソコン・ルーム、図書館、ジムなどがある。カルチャー講義なども沢山のコースがある。礼拝所まで冷房が完備していている。


礼拝の後には、マサラ・ティーとシーク・プディングを賞味。美味しい!



質素だが、みずぼらしくなく、清潔だ。敬虔だが、狂信的ではない。


シーク教徒は1万8000人しかいないのに、シンガポールにはシーク寺院が8件もある。シンガポールのシーク教徒は、イギリス植民地時代に警察官として移民してきた人々の子孫が大半だそうだ。シンガポールで、少数派のシーク教徒が、活発なコミュニティ活動をしているのは、皆、同じ職業であったため、比較的、団結しやすかったため、という。

人々が神に敬虔に祈り、伝統や文化や宗教を守っている様子は、きわめてすがすがしい。


面白度100%、親近感120%のシーク寺院訪問であった。