女は、自身の身体のことを男に語る
私は咳がひどく出て
ひどいときは 身動きも出来ぬほど
一日動けなくなるほどである
そして
医者は 理由が解らぬという
男はしばらく黙って
低い声でこう言うのだ。
「さぞ、辛い思いをしただろう。どうだ、私と旅に出よう。私は行商人。次はその町に行こう。そこで、水をたらふく飲んで元気にそこで暮らすといい」
女は、喜んだ。
何度も何度も礼を言い
痩せこけた頬を赤く染めて
それはそれは喜んだ。
女と男は 明日にも旅立つと
約束をしたのである。
翌朝、女は男を待っていた。
荷物はなるべく少なくしよう
女は赤い小さなカバンに
食料を少々と、ライト
それから 水筒を3つ入れた
体力に自信がないから
それだけを持って待っていた。
行商人は惜しまれた。
「もう行ってしまうのか。しばらくいると言っていたのに」
朝にも関わらず町に旅立つ
知らせが飛び
人が沢山集まった。
女は人垣の外で待っていた。
希望で胸が膨らんでいた。
別れ惜しまれる行商人に
朝から酒びたりの
町の男は引き止めた。
しかし、行商人はこう言った
「あそこの女が二つ山を越えた町の水を飲みたいと言うので連れていく。」
町の男はピタリと止まり
人々を退けて女に近づく。
いきなり怒鳴り散らしたのだ
「おい、女。お前は町に誇りはないのか。町の誇りは水である。それなのに…よその水を飲みに行くだと?」
女は、少し後ろに退いた。
その男の赤く怒りに満ちた顔を
なるべく見ないようにして
「私は、身体を治したいのです。ここの伝説の水では治らないのです。」
町の人々がざわめき始め
女に石を投げ付けた。
女は ひどくショックを受けた
男は怒鳴る
「お前は町の恥さらしだ。水の恩恵を忘れるヤツなどいらぬ。でていけ」
他の男はさらに言う
「この町の水は、古くから疲れを癒し病気を治してきた。その恩恵を無視して旅立つというか。愚かである。」
行商人と女は、町を逃げるように
去った。
山道は、女の体調を悪くした。
行商人はその度に薬を与え
励ました。
行商人は引き返した方がいいと
提案したが聞き入れず
今更 帰る場所もないと
女は歩き続けた。
女の体調はみるみる悪くなり
行商人は 何度も休みながら
女と歩いた。
女と行商人は打ち解けた。
行商人は励ました。
つづく