今年の収穫もひどかった。
いや、去年もひどいのだが
3年前より4年前よりひどい
今日は 年に一度の
大イベント バレンタイン。

確かに見た目は冴えないし
短髪でメガネだから
制服を着てるのに
あだ名はサラリーマンだった

ちゃらちゃらしてるヤツと
違って こういう日、気合い
入れる場所がわからないから

去年、勇気を出して
放課後に教室にカバンを
置きっぱなしにして
カバンのジッパーを開けといた
チョコレートが入ってても
いいようにね。


まぁ、結果はざんねん。
1時間 置いておいたけど
その間、屋上で時間を潰し
戻って来たら
カバンがなかった……


普通に 日直の山中が
職員室に持ってったそうだ
役立たずが!!
「だって誰もいなかったから」

山中は わかってないなぁ
あの後 先生に言われたよ
「野中大和…、残念だがチョコは入ってなかったみたいだぞ」

そう、
やはり 神様はイケメンにしか
優しくないんだ。


いや、その昔話はもういい。
問題は今年だ。

白山のヤツ。幼なじみじゃん
毎年 義理チョコくれるのに
「野中にあげる分なくなっちゃった」

あいつは最低だよ。
いつも仲良くしてるのに
一緒のグループの女子からも
貰えなかった。

いつも、ツルんでいる
野中、山中、深山、小武
白山、鶴野!!

なぜ…鶴野よ くれないのだ
去年もくれたじゃないか

特に白山だ。
中学から一緒じゃないか
つか、この学校は
中高一貫だろ…………。
鶴野は高校からだけど

まぁバレンタインなんて
俺には関係ない。


もうすぐ、学校が終わる。
もう男子は悪あがきをやめる
やっぱり 女子同士ばっか
おまえらはレズビアンか。

山中が 近寄って来て
「バレンタインどうだった?」

「いや、0だ。薄情だよな。山中は?」

山中は少し言葉を濁したが
「俺もお前と同じだ」と言った

いつものグループは
元々、帰る方向が一緒で
ばらばらは悲しいからって
一緒の方向のヤツ誘って。
白山が言い出したんだ。

白山は中学からなんだけど
アイツは 男子ともよく話すし
近所に住んでるんだけど
幼稚園も一緒らしい。覚えてない。


帰りのホームルームが終わる
男子は今日の収穫を話し合う
0なんて カッコ悪いから
さっさと教室を抜け出した。

廊下を出て 今日までだった
借りてた本を返しにいく。

町の人々は慌てて水を汲んで
持ってきたは いいものの

町の男はこう言った。
「行商人よ、もう女は死んでしまった。水を飲むことは出来ないではないか」


行商人は答えてみせた
「私は、間違っていた。私は、ここの水は女にとって良くないものだと思い連れ出した。しかし、彼女の命を繋いでいたのはこの伝説の水でした」


なんだなんだ?と町の人が
人垣を作り
また、二人の有様に困惑した


行商人は
その水を自らの口にふくんで
女の口に運んでみせた


こんなことをしても無駄だと
町の男は言った

人垣は、女を哀れむだけで
その場から帰ろうとしていた

行商人は 途方に暮れた
これからどうしたらいいのだろうか

荷物は途中で捨ててしまった
女を運んで来たけれど
この女も 死んでしまった。


人垣から あっ!!という声。
行商人は 我にかえり
女をみると

みるみる血色を取り戻し
意識を取り戻した

まだ 出会ったばかりのように
転んだら折れそうな身体で
痩せこけた頬の女は

男を見つめた。
行商人は、言葉をなくし
女が生き返った現実を
夢見心地で見ていた

「これが伝説の水…。」






何となく時を越えて
語り継がれる 伝説の水
なぜ 伝説なのか忘れてしまった



その後 長い年月を
二人でひっそりと暮らした
行商人と女は
二人とも 痩せこけて
折れそうな身体をしていたが

あれから笑顔が絶えなかった

女は、大丈夫です。
大丈夫だからと言う。

やがて、咳が出て
止まらなくなった。

女は息をするのも大変だが
大丈夫と言った


一日 二日と経つうちに
十日で 自分で歩けなくなった

行商人は、手を握り
冷たくなる手をさする

女は ごめんなさいと
何度も言い 涙した。

その涙を行商人が拭う

ついに、行商人は荷物を捨て
女を背負った。

もう、あと少しなのだから
よく我慢している。

女は薄れる意識の中で
自分の町を思い出す

母親を置いてきたことや
家畜にエサをやってないこと
女の口は 水を求めていた。

早く 隣町の水を飲まなければ
命がなくなってしまう。


男と女は 山を二つ越えた
これは 大変な旅だった。

男は女を担ぎ 山一つ越えた
男は すっかり 痩せていた。


二人は町に入ると
町の人々に事情を話し
二人を町の人々は歓迎した


この町も小さな町でした。
「よくこんな町まで来ました」と
宿屋の娘が言いました。

私の宿屋に来て下さい。
どうぞゆっくり休んで下さい

女に水を飲ませてやった。
女は眠ってしまった。

男は、すっかり胸を
撫で下ろし 町の娘の宿を借りた

古ぼけた宿屋で、ベッドが二つ
一つに女を横にして
男はぐっすり眠りについた



男は翌朝に
町の宿屋の娘に起こされた。


この女は死んでいる。
不気味だからでていって


昨日の歓迎ムードは
どこへやら

娘は 女をベッドからどけた
女は力なく床に倒れた

男は怒り、娘に言った
「お前は命の重さを知らぬ。」

娘は女を指さしながら
早くでていけ 早くでていけ

男は冷たくなった女を担ぎ
宿屋を出た


町は、昨日と変わっていた
早くでていけ 早くでていけ
お前らは 町の水を汚した

男は吠えた
「こんな水、何が癒しで何が病気を治すだ。女が死んでしまったじゃないか」

町の人々は石を投げた
知らぬ 知らぬ
いいから でていけ。

男は どうしようもなくなって
町を出て 引き返した
せめて 生まれた町に帰さねば

また男は山を二人越えた
何も食べずに 女を担いで



女が生まれた町についた頃
人々は、たいそう驚いた。

行商人の変わりように
まるで 生きていた頃の
女のように 頬がこけて痩せ
バサバサの髭が垂らしながら

女に水を飲ませてやって



つづく