鳴らない電話 見つめながら
頑張っている 君の背中思う
寂しいけど 仕事終わりの
あなたからの電話を待ってる

一瞬だけ声を聞きたいのに
届かない 消えない
どうにもならないこの想いが好き

今度の3回目の記念日に
やっとあなたにキスをしたら
私はきっと泣くかもね
今から私、楽しみだよ

お仕事頑張ってください
ホントは今日のデート
楽しみにしてたんだけど
ホントはね…

窓から見えるこの夕日のこと
たわいのない世間話も
あなた早く話したいな
そんなことばかり考えてる

電話しようと開いた携帯電話
そっと閉じて 今日はおやすみ
疲れてるかもしれないけど
ちゃんと食べて暖かくしてね

今度の3回目の記念日に
やっとあなたにキスをしたら
私はきっと泣くかもね

早く寝ようこんなことばかり
考えてしまうから
早く寝ようこんなことばかり
ホントに泣いてしまいそう
「公園にいるから来て。」

なぜか白山からお呼びが
かかり 寒い身体を公園に向け
小走りで指定された場所まで
歩いて行った。

白山が指定したのは公園の
子供が遊ぶ 遊び場だった。

辺りはもう人気がなく
彼女は 制服姿で
ブランコに寄り掛かりながら
携帯を見つめていた

俺は彼女に近寄っていった。
でも、携帯を見つめている
「白山!!」と叫ぶ

白山はホントにびっくりしたようで
「ギャー!!!!!」
と叫び 胸に手を抑えこっちを見た

「心臓がバクバクする。マジやめてよー」
と、続けた。

「なんか用事でもあんの?薄情者」
野中は今日は収穫は0で
友達に帰られるという散々で
テンションは最悪だった

「薄情?」
白山は真顔で答えた

「なんで待っててくれないんだよー。いつも待っててくれるじゃん」
ぶすったれた顔で言う

あぁ…と頷きながら
「いや、帰ってもらったの。てか、図書館の本も返却日が今日の本を貸したし、私が落合さんには早く教室から出すように頼んだ。」

ピンと来ないので尋ねた
「なんで?」


白山は深くため息をついた
「バレンタイン渡そうかと思ったけど、やっぱりやめた。さようなら」

野中は急に恥ずかしくなった
いや、白山も同じだろう

「え、くれるの?」
野中はこの謎の雰囲気に飲まれて
どう乗り切るか考えた。
しかし、これがどういう状況か
イマイチ理解出来ない。

白山は、ブランコからおりて
怒って真ん前まで
近づいて来て
「だから、あげない!!!」
と、強めに言った

野中は、ますます困惑し
「もうわけわかんない」
と 帰ろうとすると

「わけわからないのは私だよ。」
と、白山がぼそりと呟いた。

野中は上手く聞き取れず
「何?」

白山は、こっちを見た。
じっと野中の顔を見て言った
「いいわ。しょうがないからバレンタインあげる」

野中は 単に嬉しかったので
「マジか!!」
と興奮した

白山は、じっと見たまま
ちょっと、大きな声で

「渡すわ。あたしと付き合うならね!!」


時間が止まった。カラスが
何も知らずに通り過ぎた。
夕日が、二人に射して
二人の未来の道しるべを
示しているようだった。


白山は泣きはじめた。
少し焦るが近づいていって
人生初のキスを交わした。

先週、白山が面白いからって
借りてみろって言われて
読んだ小説だけど 3ページで
読むのをやめた。
そんでギリギリになった今日
ようやく返しに来た。

重いので荷物は教室に置き
本だけ持って

いつもどんだけ待たせても
文句は言われるけど
深山達は教室で
なんだかんだ待っててくれる
もう2年、
そうだから間違いない

だから、いつも
安心して用事があると
安心していなくなった。

図書館に走っていって
急いで本を返した。

教室に戻るといつもの
誰もいなかった
あまりのショックに
何が起きたかよくわからない
いないんですけど

「あれ…?」

誰もいない。夕焼け色の
教室に 日直の落合が来た。

落合は、白山とは反対で
大人しく、真面目だった
落合はセミロング
白山は髪が胸辺りまであった
落合は、色白で
白山は、白山なのに
あまり白くなかった。

落合は、ため息をついた。
「まだいたの?なんかニヤニヤしながら深山達なんかみんな走って帰ってたよ。気持ち悪かったわ」

落合は続けて
「ちょっと。早く帰ってよ。早く帰りたいんだから。」

俺もため息をついて
「落合、チョ…」


落合 「あるわけなーい!!」
俺 「ですよねー」
落合 「外は寒いから早く帰ってあげてよ」
俺「誰のために?」


ちょっと、そわそわしてた
落合は身体をピタと止め
窓の外を見ながら言った
落合「…。早く」

なんかよくわからないまま
雰囲気にのまれたので
急いで帰る支度をした。
俺「わかったよ。みんなして薄情だなぁ。」

落合と別れて校舎を出た。
そういえば久しぶりだ
一人で帰るのは。

2月だから寒いし風が強い。
足早に歩く。

昔、そういえば
中学のときに 家の近くの公園で
テスト期間、夜中にみんなで
勉強にも休憩が必要って
ここに来て喋ってたなぁ

この休憩が異様に長い。
白山から授業の
よくノートを借りた記憶がある
「いいかげん、学習しろよー」と
毎回、呆れられる。




帰り道は異様に長かった。
いつもは 誰かがいるから
短く感じるのかもしれないが
一人だと こういうことを
よく思い出すものなのか

ちょっと 悲しい。

よく考えたら、今日
あいつのことばっかだなぁ


例の公園を通りすぎた。
すると、メールが入った。