できれば毎日食べたいくらい好きだ。
家系ラーメンは、店によって美味さがちがう。
横浜駅にある吉村家が人気だが、僕はチャーシューの燻した匂いが気になるから、六角家の方が好きだった。
あじこめ、油少なめ、かため
これでいつも注文していた。
毎回注文していたら「いつものやつでいいですか?」って言われるようになった。
常連になっていた。
ホルモン青木は、「その店は「ふつう」をベストだと思っているわけだから、俺は味を濃くしたりはしないよ」と言っていた。
僕は気にせず、あじこめ、油少なめ、かためを注文した。
付き合っていた彼女に「これで大学行きなさい」と言われて渡された1000円。
それを握りしめて、あじこめ、油少なめ、かためを頼んだ。
悲しいことがあっても、嬉しいことがあっても、体調が悪いときでも、僕は常にあじこめ、油少なめ、かためを頼んだ。
あれから10年。
大学は中退し、当時付き合っていた彼女とはとっくに別れた。
東中野にある家系ラーメンに割とよく行くが、味の詰めが甘く、六角家ほど力を入れていないように感じてしまう。
だからそこでは、あじこめ、油多め、やわらかめを頼んでいる。
少しでも味にパンチが欲しいからだ。
六角家には年に2度程度しか行かなくなってしまった。
知っている店員さんは一人もいない。
そして僕は今、「ふつう」を頼むようになった。
いつぞやのホルモン青木の言葉が響いたからかどうかは分からない。
けど、なんとなく「ふつう」を頼むようになった。
六角家に行くと色々な思い出がスープに溶け出すからなのだろうか。
そんなことを思いながら終電に揺られている木曜日の夜。
本来なら日曜日にブログをアップする予定でした、すみません。