前回、ワンナイトラブ以下の経験を書かせていただきました。
今回はワンナイトラブ未満の経験を書きたいと思います。
当時のことを思い出しながら、記憶を頼りにできるだけ事実に近づけて書きます。
当時の僕(23か24歳)は一人暮らしを始めたばかりで常にふわふわしていました。
ふわふわしていたため、高田馬場にある中国系の怪しいマッサージ店で1万円を支払いそうになったり、高田馬場にあるフィリピンパブに1人で行き女の子を口説いたりしていました。
時には1人でよく分からないオフ会に参加して女の子に声をかけたりしていましたから、少々頭が狂っていたということになります。
そんな時期に出会った美しいKちゃんのお話をします。
Kちゃんは誰が見ても「かわいい」「美人」と言われるような見た目でした。まあどちらかと言うとかわいいよりも美人でしたが。
合コンで知り合ったので友達の友達という感じです。
僕は美人系よりもかわいい系の方が好みなので、合コンの最中も、合コンが終わってからも、積極的にコンタクトは取っていませんでした。
そして時は流れます。
合コンで出会ってから半年後くらいして、例の合コンの幹事をしてくれた女友達にあるパーティーに呼ばれました。
一緒に合コンに行った男メンバーは誰も来ないということだったので、1人でパーティーに参加するという形になります。
僕としてはそこで新たな女性と知り合いになろうという狙いでした。
この時期の僕のメンタルの強さは異常だったので、1人でパーティーに参加することくらいでビビりませんでした。
パーティーでは、まず、たまたまカップルで来ていた男性と仲良くなりました。
その日限りの付き合いでしたが。
ただこの男性、ほどほどに明るく、カップルで来ていたということもあってがっついていませんでした。
たまたまですが新たな女の子と知り合うには良い条件が揃いました。
ここまでパーティーの場に到着して10分程度の出来事です。
僕はこのときまで女の子を口説くことしか頭にありませんでした。
「あ!◯◯(僕のあだ名)!」
僕を呼ぶ声がします。
僕をパーティーに誘った幹事の子と、そのとなりには見覚えのある顔が。
そのパーティーにはあのKちゃんも来ていたようです。
そもそも幹事の子の友達なので何も不思議なことではありません。
Kちゃんと幹事の子は、僕が1人で来たことが面白かったらしく、僕を見ただけで笑っていました。
そして仲良くなった男性も含めて楽しい会話を始めました。
お酒を飲みながらで、しかもパーティという非日常な空間なので、なんでもない会話でもなんか楽しかったりしました。
会話も一通り終えそろそろ女の子たちとは別行動になりそうな気配がしたので、(よし、そろそろ繰り出そう)と気合いを入れた時、
「あ、あそこにソファあるよ!座ろうよ!」
とKちゃん。
それは僕に向けられた言葉でした。
幹事の子も「お、◯◯やったじゃん!Kに手出すなよー!」と後押しのようなものをしてくれました。
おそらく1人でパーティに参加した僕に気をつかってくれ、2人で行動しようとしてくれたんだと思います。
「手出さないわ!」
と言いながらも、このときからKちゃんのことが気になり始めていました。
優しいのはもちろんですが、一見クールそうにも見えるKちゃんからこのように誘われるのは意外でドキドキしてしまいました。
ソファに座るKちゃん。
その隣に座る僕。
そこまで大きくないソファなので脚と脚が当たるくらいの距離感。
意識したことないKちゃんを初めて意識してみると、やっぱり美人なんですがかわいくも見えてきました。
身近に感じているということでしょうか。
明らかに以前よりも親密になってる実感もありました。
ソファに座りながら色々な話をしました。
積極的に話すタイプではないKちゃんは、話を一生懸命に聞いてくれました。
ソファに座ったばかりのときは脚と脚が触れると変に緊張していたのが、脚と脚がくっついていても受け入れられている感じさえして安心していました。
僕はこの時すでに恋していたんだと思います。
パーティで女の子と出会うことなどどうでもよくなっていました。
Kちゃんと2人でしゃべっている時間が続けばいいなと思っていました。
幹事の子に話しかけられたことをきっかけに、二人だけの時間は終わりましたが。
パーティが終わったのはたしか21:00頃。
二次会に行く流れになりました。
当然参加です。
ただそこではKちゃんの近くには座れず、幹事の子とその彼氏がいる席になり、その2人の恋愛話を聞くみたいな時間を過ごすことになりました。
それはそれで楽しかったのですが、Kちゃんと話せず二次会も終わったことは残念でした。
時間は23:00頃。
一部の人たちが三次会に行くという話をしていました。間違いなく朝まで飲む感じでした。
幹事の子は帰るということでした。
僕も次の日は午前中から仕事だったので帰ろうと思っていました。
すると少し離れたところにいたKちゃんが近寄ってきました。
「◯◯、どうする?」
ちなみにこのころには「◯◯君」ではなく、僕をあだ名で呼ぶようになっていた気がします。
Kちゃんの様子を見るとなんとなく行きたそうな感じがしました。
僕は「Kちゃん行くなら俺は行こうかな」と言ってみました。
するとKちゃんは「え!じゃあ行こうよ!」とすごく嬉しそうにしていました。
幹事も若干驚いていましたが、次の日が仕事だかなんだかで帰って行きました。
僕は「他の人もいるから(狼になることは)ないわ!」と返しました。
さて。
三次会に参加するメンバーを見てみると、パーティの最中にまったく絡んでいなかったメンバーしかいませんでした。
「どうしよ、俺、全然知らない人しかいないんだけど(笑)」
と小声でKちゃんに言うと
「私も(笑)」
と小声で笑うKちゃん。
それを聞いた僕はなんだか嬉しくなって
「なんかKちゃんいてよかった!」と素直に伝えてしまいました。
「うん!アウェイだけど楽しいね!」
と言ってくれました。
アウェイという言葉から、ホーム=僕とKちゃん、という感じがして幸せな気分でした。
案の定、三次会では僕とKちゃんはアウェイでした。
ただ、周りの人も僕らをカップルみたいにしてセットで扱ってくれたので、ここでもなんとも言えない幸せな気持ちで過ごせました。
深夜3:00頃。
とても楽しい時間でしたが、さすがに次の日の仕事に響きます。
十分楽しい時間を過ごせたし、僕ひとり帰ることにしました。
隣に座っているKちゃんに伝えます。
「俺、明日仕事だから帰ろうと思うんだけど…」
「あ、じゃあ私も帰る」
(!?)
正直なところ、終電は無いしKちゃんは割と遠くに住んでいることは知っていたので、一緒に店を出たところでKちゃんは帰れません。
それを分かっていながら、僕はKちゃんと少しでも長くいたかったので特にそのことには触れずに一緒に店を出ました。
店を出ると、少し雨が降っていました。
店の前の道路にタクシーを見つけたので乗ろうとしました。
ちょっとずるいのですが「濡れちゃうよ、早く乗りなよ」とか言ってKちゃんを一緒のタクシーに乗せたような気がします。
とにかくKちゃんも同じタクシーに乗っていました。
「山手通りの方の東西線の落合駅まで」
ドライバーに行き先を告げ、タクシーは走り出しました。
「私、どうしよ(笑)」
「ね、なんか勢いで乗せちゃったね(笑)ごめん」
「◯◯の家の近くの駅まで乗せてもらおうかな」
「…」
「…」
「うちで飲み直す?」
「…え!いいの?」
「うん!Kちゃんがよければだけど」
誘うのは酔いながらでも勇気がいりましたが、Kちゃんがうちに来てくれることになりました。
今考えてもKちゃんはそうしたかったはずです。あんなに嬉しそうにしていたので。
僕は、Kちゃんの気持ちが変わらないように、早く家まで着いてほしい、という思いでタクシーに乗っていました。
「飲み直す」という口実で家に誘いましたが、コンビニには寄らずに家の近くで降ろしてもらいました。
Kちゃんも何も言いませんでした。
たぶんKちゃんも、飲みたい、とは思ってなかったと思います。
当時僕の住んでた家は広い1Kの家でした。
玄関入って左側にセミダブルのベッド。
真ん中にテーブルという感じでした。
家に着いて直後のことは忘れてしまいましたが、僕は友達が泊まりに来たときのための布団のセットをセミダブルベッドの隣に敷いたのは覚えています。
どうしてセミダブルベッドで一緒に寝ようとしなかったのかは今となっては覚えていません。
もしかしたら、誘いはしたけどKちゃんに断られたのかもしれません。
なぜかこのあたりの記憶があまりありません。
少し酔いすぎてたのかもしれません。
部屋でお話をしながら、僕が次の日仕事ということで寝ようということになりました。
僕はセミダブルベッドで。
Kちゃんは床に敷いた布団で。
僕としてはKちゃんの隣で寝たかったんです。
性欲のみではなく、はっきりと「好き」という気持ちでした。
もちろんエッチもしたかったのですが、それ以上に隣で寝てキスがしたかったんです。
僕は暗い部屋の中でKちゃんに声をかけました。
「…隣、行っていい?」
「…うん」
ベッドを降りて、Kちゃんの入っている1人用の布団の中に入りました。
僕は体をまっすぐにして天井を見ていました。
右側にKちゃんの温もり。
Kちゃんの体が少しこわばっている感じもしました。
その状態でしばらく続く無言。
僕は隣で寝ているKちゃんの呼吸音や香水の匂いやシャンプーの匂いにドキドキしていました。
「Kちゃん、こっち向いて」
数秒遅れてKちゃんがこっちを向きました。
我慢できなくなった僕はKちゃんのほっぺたに手を当ててキスしようとしました。
そのとき、
「そんなつもりじゃなかった!!」
早口で言って半身を起こして後ろにさがるKちゃん。
僕はKちゃんの言葉にただ戸惑っていました。
Kちゃんの顔は悲しそうな、怒っているような…暗くてよくは見えませんでしたが、僕にはそう見えました。
僕はあわててセミダブルベッドの方に戻りました。
気づいたら正座していました。
とにかく謝らなくては、と思いました。
「ごめん!ホントにそういうつもりではなかったんだけど、ごめん!」
自分でもなにを言っているのか分かりませんでしたが、必死に謝りました。
この時もまだ気持ちは追いついていなく、
(なぜ、Kちゃんに断られた?)
(Kちゃんはどういう気持ちでうちに来た?)
など、様々なことを一気に考えてしまいました。
考えても答えなど出せず、ただKちゃんに嫌がられた、という事実ははっきりしていました。
後悔と混乱の気持ちでただ正座する僕。
おびえるような怒っているような悲しそうな目で黙っているKちゃん。
僕はそんなKちゃんを見ていると、自分がすごくひどいことをした気持ちになってきました。
「本当にごめん。本当にもう隣にも行かないし、何もしないから。だからもう寝よう」
Kちゃんにこう伝えるのが精一杯でした。
Kちゃんは黙ってうなずくと布団の中に入りました。
深夜4:00頃のことでした。
罪の意識とアルコールでぼんやりした頭で、僕は携帯電話のアラームを9:00にセットして布団に入りました。
気づいたら眠っていました。
アラームの音で時間通りに目覚めると、もうKちゃんは僕の部屋にはいませんでした。
布団も綺麗に畳まれていました。
その整いすぎた布団の畳み方に、なんとなく僕はKちゃんの気持ちが離れていったことを察しました。
それ以来Kちゃんと会うことはありませんでした。
何度もKちゃんに連絡をしてみましたが、連絡が返ってくることはありませんでした。
今もどこかで元気にしてるといいな、と思います。