セロ弾きのゴーシュ
        宮沢賢治

 『ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかではいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。
 ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度の町の音楽会へ出す第六交響曲(こうきょうきょく)の練習をしていました。
 トランペットは一生けん命歌っています。
 ヴァイオリンも二いろ風のように鳴っています。
 クラリネットもボーボーとそれに手伝っています。
 ゴーシュも口をりんと結んで眼(め)を皿(さら)のようにして楽譜(がくふ)を見つめながらもう一心に弾いています。
 にわかにぱたっと楽長が両手を鳴らしました。みんなぴたりと曲をやめてしんとしました。楽長がどなりました。
「セロがおくれた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ。」
 みんなは今の所の少し前の所からやり直しました。ゴーシュは顔をまっ赤にして額に汗(あせ)を出しながらやっといま云(い)われたところを通りました。ほっと安心しながら、つづけて弾いていますと楽長がまた手をぱっと拍(う)ちました。ー』



『セロ弾きのゴーシュ』宮沢賢治


チェロといえば、カザロフ、ヨーヨーマ、
チェロの音は、優しい温かな響きがありますね、大好きです。
チェロの音から宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』を思い出し読んでみました。

とてもいい話ですね。
素朴で、暖かい物語です。


Yo-Yo Ma plays the prelude from Bach´s Cello Suite No. 1






にほんブログ村 美術ブログへ


文化雑貨店