血液透析の患者さんこんにちは

皆さんの腕にあるバスキュラーアクセスは、命綱ですね

私はバスキュラーアクセスの番人をやってきましたので、よくある心配に関して数回に分けて解説します

看護師さんも得意でない方は患者さんのために知っていてください

今日のテーマはシャントの腕にでるむくみです

透析をする血管が、ザーザーと音を立てている場合、あなたのバスキュラアクセスには動脈と静脈をつないだシャントがあります。

 

一般に

自分の血管で行なってあるものを内シャント

人工血管を使ったものをグラフト・シャント

などと呼ばれています

 

あなたの透析用の血管はどんなタイプですか?

 

今日から、そのシャントがある透析をしている方の腕が

浮腫んできたときのチェックポイント

を数回にわたって連載します。

看護スタッフの方にも役に立つかもよ。

 

浮腫んでしまう腕の場所は?

浮腫む場所を3カ所に分けたら、どこにはいりますか

1、手の甲を中心にむくんでグローブみたいだ!

2、肘から先(前腕と言います)がひどく浮腫む

3、肩から腕全体がむくむ

 

どうですか?

実は浮腫の原因は重要な血管の閉塞が絡んでいる可能性もあります。

大まかなチェックポイントを図示しますね

 

さて、きょうは第一弾として

手の甲を中心にグローブみたいに浮腫む時のお話しします。

 

手の甲だけ浮腫んだ時、

シャントから手の甲に逆に向かって拍動している血管を探しましょう。

 

手首にシャントがある場合には、その近くから腕の背面を通って手の甲に向かって血管が太くなっているのですぐにわかります。

 

この逆流血管がある場合

これをソアサムと言います。

 

きょうはこの逆流血管を悪者血管と言いましょう

 

ソアサムだと思ったら、次にその逆流している悪者血管の一番シャントに近い部分を強く手で押さえて止めてみましょう。

 

この場合腕を掴むようにして、親指の一箇所だけで悪者血管だけをしっかり抑えます

その時、

シャントの音が弱くなったり止まったりしますか?

 

悪者血管を抑えても、シャントが何も変わらず元気にザーザー言っているようなら、治療は簡単です。

 

悪者を退治すれば良いのです

 

具体的にはちょっと麻酔してその血管をしばって止めてしまえば手のむくみは改善します。

かなり簡単な手術なので5分で終わります。傷も5ミリから1センチでしょう

 

しかし、

悪者血管を抑えたらシャントが弱くなったり音が止まって拍動だけになってしまった場合には、そんな簡単に引きません。

 

なぜなら、悪者血管がなければシャントがダメになってしまう状態だからです。

 

うーん

悪者血管のせいで浮腫んでしまうけど、それがないとシャントが潰れてしまう・・

 

これは、シャントの本来流れるべき重要な血管が、閉塞したり狭窄したりしてしまったことによって、行き場のなくなった血液が手の甲に逆流している状態なのです。

 

ココでは閉塞してしまった血管を重要血管としましょう

 

重要血管が閉塞して、それによって行き場のなくなったシャント血液が酒杯に逆流して悪者血管が育ってしまったのです。

 

警察がいなくなったらマフィアが幅を利かせるようになった感じでしょうか(笑)

 

こんな時に悪者血管を閉鎖したら、シャントそのものがダメになってしまいます。

 

治療はまず重要血管を治してから悪者血管を縛ります

この場合には僕らのようなアクセス外科医に相談してください。

 

重要血管に流れの狭いところ閉塞があれば、そこの血管を風船で拡張して流れを良くするのです

 

 

これはVAIVTと言って透析のように針を刺して、その中を通る細ーいワイヤーや外から膨らます風船(バルーンと言います)を使って流れを改善する方法です。

 

僕は日帰りでエコーで見ながら放射線被曝しないように治療しています。

もし、このVAIVTで治らない場合には、外科手術で血管のバイパス術を行います。人工血管を使うこともあります。

 

治療の時間はVAIVTで30分から1時間。バイパス手術で1時間から1時間半くらいで、日帰りで可能です(施設によっては入院でやっているようです)

 

ソアサムを放置したらどうなる

静脈の還流障害から指が壊死に陥ることもあります。シャントの近くを穿刺することで透析は可能な場合が多いですが、きちんとした治療を受けましょう!

 

次回は腕全体がむくむ場合のお話しをしましょう