今回は、薬剤師×プロコーチ・阿部雅美がお話をします。
「無駄な経験はひとつもない」
若くしてシニアマネジメントに就いた私の知人2名が、まったく別の機会に、同じ言葉を発言しました。
製造業に入社した彼は新人時代に、毎朝、おおぜいの社員が出社する前に社旗を掲揚する業務を担当。時間外に始まる業務で、一見意味がなさそうに思える業務は、多くの社員に「今日も仕事をするぞ」というモチベーションや「安全な作業をしよう」という注意を、示す価値ある業務だと気づいた。
ベンチャーに入社した彼女は、医薬品開発の専門職で入社。ベンチャーゆえに、専門業務以外の営業や、データの取りまとめ業務、そして、経理などもやらざるを得ない実態があった。しかしながら、これら専門以外の経験が専門自体の知識やスキルに、大いに厚みや深みをもたらしたことを実感した。
と、彼らはそれぞれに「無駄な経験はひとつもない」を話してくれましたか。
これらの背景には、他の人とは異なるどんなマインドや姿勢があったのでしょうか?
そこには、どんな経験も成長の糧にする、彼らの洞察や学習、そして行動力があったのだろうと、私は考えました。
彼らはそれぞれに、自身のさまざまな経験を振り返り、反省し、日記や記録を付け、上司に報告し、同僚に相談し、Lessons and Learnedなどをしたのだと思います。
そして、経験から教訓を導き、教訓を次の行動に反映して、また経験を重ねて、自らの成長に変えたのだと。
しかもこのサイクルを、より多くの場面で実行してきたのだろうと。
若くても要職に就くことができたのは、こんな能力を持っていたからではないでしょうか。
つまり、「無駄な経験はひとつもない」は、「経験学習」を、より多く実践できた人たちの言葉だと感じました。
経験学習は、コルブが提唱した経験>内省>教訓>実践のサイクルを回す成長のモデル。
このサイクルを回すことを、より多くの経験で、より効率よく実践できることが、成長を加速するひとつの要因ではないでしょうか。
日々仕事をこなすだけではなく、意識して仕事の手を止めて、今の状況を考える。反省や内省、報告書なども、集中して取り組む。
そして、次のアクションに活かす。
偉大な宗教改革者マルティン・ルターの名言が思い出されます。
「今日はすべきことがあまりにも多いから、1時間ほど余分に祈りの時間を取らなければならない」
また、お話をさせてください。