今回紹介する本は『英語達人列伝』です。著書は斎藤兆史さんで、出版社は中公新書です。

 

「英語達人」とタイトルにあるように、英語をただ使えるだけでなく、日本人にも関わらず英語の達人の域にまで英語力を鍛えた人たちの話です。

 

何もしなくても達人になれるわけではなく、並外れた努力の末に達人になったわけですが、その上、英語だけに時間を割いていたわけではありません。彼らは、本来の仕事のためにツールとして英語を使っていた人がほとんどです。

同じ日本人でありながら、英語でネイティブの人たちに対して丁々発止とやりとりをして、言い負かしたりする姿を知ると、自分も英語の勉強を頑張ろうと思えるのです。

新渡戸稲造、岡倉天心など、英語での著作で有名な達人たちの他に、野口英世のエピソードが書かれています。私が個人的に一番好きな話なのですが、彼はアメリカに向かう船の中でシェイクスピアの本を読んでいました。もちろん原書です。それを見た人が、そんな古いものよりも現代のものを読んだ方がいいのではないかとアドバイスします。すると、野口英世は(以下は『英語達人列伝』の145ページより引用)「古くとも、シェイクスピアの英文は、代表的なものです。先ず我々は、古いものを初めから読む方がいいと思ひます」と答えるのです。(引用終わり) シェイクスピアの英語は野口英世が渡米した当時、すでに古いもので、日本での古文に相当します。ネイティブでも、知識がないと読めないものだったでしょう。それを原書でさらりと読みこなしてしまう。その英語力に脱帽します。さらに、この本には英語に関連した部分だけで、野口英世の人生全般については書かれていませんが、私は小さい時から野口英世が好きで、伝記等を何冊か読んできました。英世は小さい時に手に火傷を負って、いじめられっ子であり、お金もなかったので、通常の大学を出て医術の免許を取ることは出来ず、当時、勉強できる人にだけ認められていた難関試験を合格して医師免許を取得しています。野口英世の生涯を知るものとして、彼の執念ともいえるような向上心の一端を英語の勉強姿勢にも見ることができ、英語だけでなく、人生そのものを頑張る気持ちにさせてくれるのです。

 

英語の学習は、どんどん実力がつくことを実感できる時ばかりではありません。水面下では力が付いていても、なんとなく伸びが実感できない時もあります。そんな時は、この本を読んで、やる気を奮い立たせてみてはいかがでしょうか。