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ミリ秒の戦い…東証に勝算はあるのか ライバルは速さ10倍
SankeiBiz 8月6日(月)8時15分配信
東京証券取引所が7月から株式売買システム「アローヘッド」の処理能力を従来の2倍に引き上げ、注文を受けてから売買が成立するまでの時間を1000分の1秒以下に高速化した。巨額の資金を運用する機関投資家を中心に、国内外でコンピューターによる自動発注の利用が増え、相場の値動きに合わせて資金を瞬時に決済したいというニーズが高まっているためだ。ただ、世界の主要取引所では東証を上回る超高速システムの稼働が相次いでおり、アローヘッドは見劣りしつつある。来年1月の大阪証券取引所との経営統合後の取引システム戦略が注目される中、東証に巻き返しの勝算はあるのか。
「アローヘッドがあるから世界的なヘッジファンドが取引に参加してくれている。(システムが)昔のままだったら今回の業績は報告できなかった」
東証の斉藤惇社長は7月27日の2013年4~6月期決算発表で、欧州債務危機の逆風にもかかわらず最終利益を前年同期比46%増と伸ばせたことを引き合いに、アローヘッドの“貢献”をこう強調した。取引所は取引量に応じた手数料が収入源のため、いかに多くの注文を獲得できるか、特に総運用資産が約2兆ドル(約156兆円)に上るといわれる世界のヘッジファンドを呼び込めるかが業績を大きく左右する。
そのヘッジファンドなどで主流となっているのが、相場の値動きを解析し、ミリ秒(1000分の1秒)単位以下の高速の自動発注による頻繁な売買で利ざやを積み上げる「ハイ・フリークエンシー・トレーディング(HFT)」と呼ばれる取引手法だ。HFTは今や欧米の主要取引所では約6割、東証でも約4割を占めるなど、市場での存在感が高まる一方で、これが世界の証券取引システムに「ミリ秒の高速化競争」を迫っている。
東証が10年に導入したアローヘッドは、売買が成立するまで約3秒かかっていた従来システムに対し、1000分の5秒(5ミリ秒)と約600倍の高速取引を実現。当時は世界のミリ秒競争をリードし、東京株式市場に投資マネーを呼び込む起爆剤と期待された。だが、開発費約120億円に5年間の運用費用最大120億円という多大な費用をかけたアローヘッドの導入効果は限定的だ。斉藤社長の言葉通り、確かにヘッジファンドの取引獲得には一定の成果を上げているが、東証1部の1日平均の売買代金は1兆円割れで低迷し、減少傾向に歯止めがかかっていない。
1日当たりの注文件数も1000万超と処理能力の5分の1以下。アローヘッド稼働後も東証の売買代金はニューヨーク証券取引所の4分の1程度にとどまったままだ。しかも、東証とアジアのハブ(中核)取引所の座を競うシンガポール証券取引所は0.074ミリ秒、ロンドン証券取引所は0.125ミリ秒など、世界では処理能力を増強したばかりのアローヘッドより、さらに10倍も速いシステムがすでに稼働している。十分に取引量を増やせないうちに東証のシステム優位性は色あせつつあるのが現実だ。
国内でも証券取引所を経由せず株の売買ができる私設取引システム(PTS)が、9月からアローヘッドを上回る0.5ミリ秒以下の高速取引に対応する予定で、東証を取り巻く競争環境は厳しさを増している。ただ、市場には取引の高速化競争の行き過ぎに懸念も出ている。例えば、HFTはいったん出した注文を取り消す比率が高いといわれる。大量の買い注文を出し、株価が値上がりしたところで注文が確定する前に取り消す「見せ玉」は違法な株価操作だが、取引の超高速化で「見せ玉かどうか確定できない」(東証)として、事実上の“野放し”状態だ。
また、国内の証券会社からは高速取引の導入は「東証から退場を迫られたも同然だった」(老舗証券)との声も聞かれる。売買システムの高速化は、取引参加者の証券会社にもシステム高度化の投資を迫るため、投資余力のない中小業者の中には、高速化競争に対応できず廃業した会社もあるためだ。
金融システムのソフトを手がけ、取引所の事情にも詳しい米サンガード社のマイケル・ロス市場システム営業部長は「高速化でHFT以外の投資家のメリットは薄れ、市場離れの一因となっている。東証は高速化の恩恵を受けにくい投資家に配慮した施策を打ち出すべきだ」と分析。野村総合研究所の大崎貞和主席研究員も「東証はシステムが世界標準に追いついた今、高速化にこだわるだけでなく、投資マネーを呼び込む独自の仕掛けが不可欠」と指摘する。東証は14年度中にも次期アローヘッドを導入する予定だが、システムの高性能化で投資負担も増す中、競合の動向もにらみ、どこまで高速化を追求するのか難しい判断を迫られる。(小川真由美)
最終更新:8月6日(月)17時9分