この数日間

うっすら意識はしていたものの

回復する可能性への期待を捨てきれず

大丈夫と言い聞かせてきた私は

この日も工夫して波平さんに

ご飯をあげようとしていた。

 

朝の薬タイム。

ヨダレが出てきたらムースを口につけて

それから薬をあげてみた。

それでもヨダレは止まらなかったが

口を拭きながら顎を上げて、

少しムースを入れたら

ごくん。と飲めたので嬉しかった。

 

この日は仕事に融通が利いたので

10時頃には一旦帰宅できた。

ゼラチンで固めて補給するのはどうか。

と考えてた私は、

早速クラッシュアイスのような

小さい氷ができる製氷機にゼリーを作った。

アミノ酸のゼリーを少し食べさせてみた。

口に何か入るのを嫌がったが

液状やムースよりは飲み込めたようだった。

 

14時頃母とバトンタッチ。

母も体調が万全ではない中

頑張ってくれていてありがたい。

 

波平さんの呼吸が早いようだったので

酸素ハウスに入れて、

出たがったら出してあげて。と伝えて

仕事に戻った。

 

帰宅し、すれ違いで帰った母から

酸素ハウスに入れたよと連絡がきてた。

 

帰宅してみると、やはり呼吸が早い。

今なら病院も間に合うだろうけど

昨日の様子を見るともう無理させたくない。

できる限りの事をして見守ろうと決めた。

 

ハウスの端を鼻でつんつんとして

出たがったので開けてあげたが、

よろよろと2歩くらい出たら

床に伏せてしまった。

 

毛布へ移動させてお薬をあげた。

これが最後のお薬になったが

今となっては、もうあげなくても

よかったんじゃないか、と後悔してる。

 

 

夫に息が荒くなってきた事を連絡すると

急いで帰るとの返事。

 

2人で波平を見守り

撫でてあげる事しかできないが

声をかけながら撫で続けた。

 

寝返る力もなくなって

モゾっと動いたら体を支えなくては

いけないくらい弱っていた。

 

あぁもうすぐかもしれない。

 

 

本当だったら肺水腫を起こした

あの夜に力尽きてても

おかしくなかった。

それでも頑張ってくれたのに

もう少し、もう少しと

欲張りすぎたよね。

苦しかったよね。ごめんね。と

伝えた。

 

大好きとありがとうとごめんね。を

何度くり返したか分からない。

 

フゥーと息をした後

波平さんは引きつけを起こした。

撫でている手の中で

心臓が止まったのを感じた。

 

この時の絶望は間違いなく

人生で一番の絶望だった。

 

声をあげて泣いた。

 

波平さんの身体に顔を寄せ

本当に心臓が止まってしまった事を

理解しつつも、まだ温かくて

ふわふわの身体が愛おしくてたまらなかった。

 

時計を見ると22時36分だった。

ありがとう、よくがんばった。

えらかったね。

 

 

波平 8歳4か月🌈

2022年11月30日

22時36分 永眠