行動観察のプロの方から、日本のオフィスを見たいのだけれど、そういうオファーもたくさん来るのに、OKしてくれる企業がなかなかない、という話を複数聞きました。

そうだろうと思います。
日本で、企業のオフィスを見学させてくれる所は、何らかの工夫をしている組織、会社です。フリーアドレス導入のところ、個室のところ、お客様スペースのあるところ、いずれもワークプレイスに工夫を凝らしていて、それもPRの一つとしているから、見せてくれるんですよね。

一方で、特に組織を挙げての工夫点はなく、歴史的にそのまま慣習となっているようなオフィスはなかなか見ることはできません。
そもそも、そのオフィスのメンバーが他者に見られることのメリットを感じられないでしょう。「うちはー特に何もやってませんから」

もちろん、業務上の秘密もあるんです。そこで仕事の資料を広げていたりするわけですから。でも、秘密を守りたいだけかというと、それだけではないような気がしています。
海外(どこの国か聞き忘れました)では、契約をすればそこに守秘義務が発生するのだから、オフィスを見せても構わないと解釈するようです。
日本でも当然機密保持契約はしますが、だからといって、オフィスは別と思う人が多かったように思います。

では、何が秘密なのでしょう?見られたくないものなのでしょう?
それは、シャインの言う文化の3つのレベルのうち、最後の暗黙的なものなのではないかと思います。
長年の習慣から、ムラ以外の人や物を排除する異物排除習慣が刷り込まれたのでは?と想像します。

例えば、あなたが他の部署(知り合いがいない)にふらっと立ち寄ったとします。「この人はここの人じゃない。何者?」という冷たい視線を浴びる、「何の用ですか?」と冷たい声で言われるのが異物排除です。
悪気があってそうしているのではなく、長年の習慣なのです。
こうしたオフィスで観察をするため、景色に溶け込むのはとても難しいだろうな、と思います。