三日月姫さんの大学院での授業の話を又聞きし、twitterでの話も読んで、「越境はなぜ必要か?」「越境者になることはいかなることか?」「企業、政府がそもそも越境を支援することは可能か?」「支援された越境にどんな意味があるのか?」について、考えています。

1.越境はなぜ必要か?
同じ組織にずっといると、馴染んでしまい、驚く力がだんだん弱くなってきます。

仕事の中での当たり前が増えれば増えるほど、考えずにこなせるようになるので、一見、効率はよくなります。

ですが、埋没し過ぎると、仕事の意味を「そもそもこういうことだったんだ」と1枠大きな外側から見て、問い直し、振り返ることで次に進む、がしにくくなってしまいます。

人が変わるのは、自ら気づいて行動を起こすときであり、気づくためには驚く感度を上げる、気づいたことを改めて意味付け、腑に落ちることが必要です。

成長のためにも変化を起こすためにも、驚く力と意味付ける力を高めることが必要だと思うのです。

では、この驚く力と意味付ける力を高めるにはどうしたらよいでしょうか?

その答えの1つが「越境」だと思います。

2.越境者になることはいかなることか?
越境者になることは異人になることです。越境することで、これまで眠っていた異人の目が開かれ、異人性を再獲得するのだといってもよいでしょう。

新しい世界の文化を読み解くには、「驚きと意味付け」surprise and sense-making が必要です。

越境して、人は新たな世界に驚き、どういうことなのか考え、「こういうことだったのか」と意味付けることによって、越境学習者になるのです。

そして、越境学習者は新たな世界での発見を旧世界にも適用し、旧世界を再発見します。新しい世界を意味付けた力が、今度は元の組織文化を変える力になるのです。

3.自ら越境することはなぜ必要になったのか?
ここで、最初の問いの形を少し変えて、自ら越境学習する人がなぜ現れたのかを考えたいと思います。

驚く力と意味付ける力を高めることは越境しないとできないのでしょうか?

そうではないと私は思います。
もともと、企業の中には定期的に驚く力や意味付ける力を高める機会がありました。それは、新人採用、中途採用です。

異人(新人、中途採用者)を放り込む刺激により、文化触変 acculturation が起き、ベテランにも驚きや、改めて説明することによる意味付けが定期的に起こっていたと思います。

越境が組織外部での文化触変とするなら、新人、中途採用は組織内部での文化触変だったのです。

ですが、リーマンショック後の採用圧縮、即戦力重視の採用により、人はより選ばれて採られるようになり、異人が少なくなったのではないでしょうか。

また、もう一つの驚く力や意味付ける力を高める機会、環境変化、組織変革 organizational transformation はどうなったでしょう?
組織変革が成功したときは、自らの問い直しにより、異人性を回復する人が増えました。組織が多様化していったともいえます。ですが、難航している今は、問い直しではなく、詰問になり、問題者探しになり、萎縮してしまったのでは、と思えてなりません。

そんな状況を察知した人達が、越境により、異人性を再獲得し、深く越境のコミュニティに関わって組織変化も体験しているのではないでしょうか。
今の企業にないものが越境によって得られるから。

つづく