小学校卒業間近となったある日、私たちは校長先生の面談を受けることになりました。

私が通っていた学校の1学年は全体で100人くらいでしたから、校長先生が「よし、全員と面談しよう」と思えば、可能な数でした。まあ、早い話が、当時の校長先生たっての希望で、もうすぐ卒業する児童全員と面談した、というわけです。


校長先生も忙しかったせいか、1対3のグループ面談となりました。私もあるグループに割り振られ、校長室に初めて入りました。

いろいろなことを質問されたのですが、最後に、「将来、何になりたいですか?」という質問がありました。


私は現金な子どもだったので、ここは無難に回答すべきだ、と判断し、


「会社員です」


と答えました。


すると、校長先生は、


「そうか、会社員か… OLだね…」


と手元の用紙に書き込んだのです!


私は即座に心の中で、


「それは違います。OLは会社員ではありません。私は Office Lady になんてなりたくありません」


と思いましたが、口には出しませんでした。もうすぐ卒業しますし、校長先生は何を思い立ったか、記念に面談してくれているので、そんなことを言い出すのは大人気ないと思ったのでした。


折に触れ、この面談を思い出すのは、脱線の瞬間を意識した事例のひとつだからだと思うのです。