小学生の私は、「電車ではお年寄りや体の不自由な人に席をゆずるもの」だと思い込んでいました。義務云々ではなく、純粋にそうするのが当たり前だと思っていたのです。


遠足か社会見学で電車に乗ることになり、友達3~4人と一緒に電車に乗りました。席が空いていたので、座っていたら、おじいさんとおばあさんが次の駅で乗ってきました。

当然、席をゆずるものだと思っていた私は、おばあさんに席をゆずりました。二人連れでしたので、友達にも席をゆずって、といって、おじいさんにも一緒に座ってもらいました。その二人は二駅ほど後に、降りていきました。

降りた後空いた席に、また私たちは腰掛けました。そして、次の駅でまたおじいさんとおばあさんが乗ってきて・・・(以降繰り返し)


というわけで、何度か席をゆずったのです。お礼をいう人もいれば、いわない人もいれば、すぐに降りるからいいですと断る人もいましたが、私は気になりませんでした。だって、当然のことをしているのですから。見返りなしに。


そして、悲劇は起こります。

席をゆずられた方のお一人が、なんと!感謝状を私の小学校の校長先生にあてて書いてくださったのです。

校長先生は全校生徒の前でそれを読み上げて、大変ほめました。友達はそれを聞いて得意そうに「あれは私たちのことだよねー」と言いました。それをきっかけにいじめられたのかどうか、今では覚えていませんが、いろいろあったことは確かです。


こうして私は、もう席をゆずるのはやめようと思うようになりました。

そして、何よりも、学校の名札を胸につけたまま電車に乗るのは絶対にやめようと心に誓ったのでした。