その日はいつものように

お店に行って、

お酒やケイタとの会話を楽しんでいた。


店内には二人だけ。

今日はマスターも他のスタッフさんもお休み。



その日は雨が降っていて、

あまり人の出入りもなく、

わたしは二人だけの空間を楽しんでいた。


二人で話をしているだけで、

楽しい気持ちになれたし

満たされるものがあった。


わたしとケイタは

妙に「テンポ」があっていた。

「テンポ」のあう人といるのはとっても楽だ。



1時間後にようやく別のお客さんが来店。


しょっちゅう顔をあわせる

常連のHさんだった。


未婚男性で自由な生活を楽しんでいるHさんは、

普段は塾の先生をしている。

快活でとても優しい人で誰からも好かれる人。



Hさんには色んな話をしてもらえるので

二人ではなくなったけど

それもそれで楽しかった。




Hさんを交え、色んな話をしているうちに、

「いつ結婚ってしたい?」

っていう話題になった。


アツシに

「結婚しよう」って言われるたび

何だか焦りを感じていたわたし。


その話が進むにつれて

このままでいいのかなぁ。

なんて不安があった。





あんなにアツシが好きだったのに、

本気で結婚したいって思ってたのに。

何でこんな気持ちになるんだろう。




考えれば考えるほど

なんだか苦しくなって、

だんだん話を聞くのがしんどくなってきた。


手に入ってしまったら

幸せって幸せだと感じなくなるんだろうか。




そんな中、

Hさんの一言が

わたしの心に突き刺さるのでした…。

ケイタと出会ってから3ヶ月。


わたしとケイタはお店以外でも

電話やメールで

色んな話をするようになっていた。


仕事の話や、

わたしからの恋愛相談。

ケイタには彼氏であるアツシの話をしていた。




でも本当は、

アツシのことよりも

ケイタにかまってほしかった。


わたしの中では

不思議な魅力をもったケイタを

特別な存在として感じ始めていた。



アツシは

自然とその変化を感じ取ったのか、

そのころから


「結婚を早くしたいね。」

という言葉を

よく口にするようになっていた。



普通の女性だと喜ぶはずであろう、

「結婚」という二文字を耳にするに連れて

わたしは


「本当にこのままでいいのだろうか」

と焦るようになっていた。




そんなあるとき、

いつものようにバーで飲んでいたら、

お客さんとケイタとの会話で真実を知ることになったのでした…。

お店に通い始めて2ヶ月が過ぎた頃、


週1回から2回の割合で

そのカフェバーに通っていたわたしは

「常連さんの仲間入り」させてもらえていた。



お店にはマスターやケイタを慕って

色んなお客さんが来ていたし、

そんなお客さんたちと話して友達が増えるのも嬉しかった。


何よりも

ケイタと一緒に入れる時間が

とても楽しかった。


アツシがいるのに不謹慎だ。と思う反面、

彼にはない魅力を持っているケイタに

どんどん惹かれていった。


さりげない優しさだとか、

仕事なんかへのちょっとしたアドバイスだとか、

そして、仕草も。



あれは大人の色気というんだろうか?


アツシが荒削りな魅力を持っているとしたら、

ケイタは洗練されている何かを持っていた。

比べること自体が間違いなのかもしれない。




わたしにとってそのお店に通うことは

元気の素となっていた。

ケイタが元気の素だった。