book memo

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読んだ。思った。

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「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本や大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!

(裏表紙より引用)


第一章を読み終えた時点で本を一回閉じた。それだけでお腹いっぱいになっていた。なんと周到に練り上げられた構成。謎解きのように何度も前のページを見返しては頭の中で答え合わせをする。物語はクラスの担当教員・森口の”告白”から始まる。死体で見つかった娘と彼女を殺した少年A・B。全六章はすべて誰かの独白で綴られているが、その真実の如何は読者の想像に委ねられている。湊さんはこの物語に正解を与えていない。読む人次第で違う表情を見せるモノローグ。私は独白者自身ではなく、その目から見た周囲の人物像が興味深かった。


以下、ネタバレ有り。


第一章 聖職者

初っ端から森口先生の流れるような口上に引っかかりました。
犯人の少年2人の名前をA、Bとしつつ、それが誰かわかるように既に布石を打っている。
理科の先生らしく冷静な理路整然とした話の持って行き方。
彼女目線から見た少年Aの渡辺修哉と少年Bの下村直樹は卑劣な子供の仮面を被った犯罪者。
最後の復讐方法にぞっとした。恐ろしいのではなく、純粋に驚かされた。


第二章 殉教者

委員長の美月。
全編を通してみると、彼女もかなり可哀想。
美月の目線を通してみる修哉は冷血な殺人犯から認められたかっただけの哀れな少年、
そしてほの暗さを持ち合わせた不遇のヒーローに映る。
2人の夜のコンビニからのシーンにはときめいたし、
翌日の制裁に対する制裁には正直スカッとした部分もあった。
それだけ美月の目を通してみた修哉は格好良かった。
それだけに修哉の独白を読んだ時は辛かったけれど。
さらに彼女が直樹を初恋の相手としていたことに対し、
直樹パートではまったく歯牙にもかけられていないところがまた辛かった。
亡くなって一週間経っても誰も探しにこない彼女。
だからルナシー事件に捕われたのかもしれない。


第三章 慈愛者

直樹の姉の目線を借りた直樹の母の独白。
最初はただの盲目的な母親かと思ったら、意外と考えるところはきちんと考えている。
そこに確かな愛もあった。
ただ、彼女は理想主義だった。彼女の理想に沿わなかった。そして、言ってはいけない一言がこぼれ落ちた。
次の直樹パート合わせ読むと、二人の心境の合った点と行き違った点が露になった。


第四章 求道者

元から心の弱かった直樹はとうとう完全にやられてしまった。
もしも修哉と出会っていなかったら、まったく別の人生を送れていたのか。
それともその性格故に早かれ遅かれ破綻する羽目に陥っていたか。
どんな心理状態の変化があったにせよ、生きていると確信した愛美をプールに落とした罪は大きい。
愛美を直接殺したのは間違いなく渡辺修哉ではなく下村直樹である。


第五章 信奉者

きっと読者が待ちに待ったであろう、真打・渡辺修哉の登場。
遺書という形を通って綴られる彼の心境。
いったいどこまでが真実なのか、というのは読み進めるうちにわかった。
ほとんどが、嘘だ。彼の、自分に良いように解釈した、嘘。
一番直裁的な感想は「こいつただのマザコンじゃん」
同じことを文中で指摘した美月は初めての生の殺意というものを修哉に教え死んで行った。

そして、衝撃の、最後。


第六章 伝道者

満を持して再登場、森口悠子先生。
やんちゃ先生の大きな愛と短かった2人の蜜月期間は切なかった。
あまりにも冷静な、少なくとも表面上はそう聞き取れる声で、一つひとつ断罪されていく。

終わりには賛否両論ありそうだけれど、私はすっきり終われたと思っている。
もちろん気持ち的なすっきりではなく、物語的なすっきりだ。



朝井リョウ作品に引き続き、湊かなえ作品のファンになってしまいそうだ。
ミーハーっぽいなぁとなかなか手が出せなかったが、人気作品には人気になるだけの何かがある。
そう実感した作品でした。


初読了 2014年11月18日 @JAPAN
 衝撃、だった。

 舞台は地元でも有名なミッション系女子学校、聖母女子高等学院文学サークルの「定例闇鍋朗読会」が行われる優美でゴージャスなサロン。集うは個性的で美しい六人の女子生徒たち。
 会では闇鍋をつつきながら各自が用意してきた短編小説を朗読する。互いの顔すら見えない闇の中、研ぎすまされた五感で感じ取る物語のテーマは———”白石いつみの死”。

 それぞれすれ違う物語と犯人像、そして最後に明かされる総ての裏と新事実。展開も、構成も、何もかもが完璧に計算し尽くされている。
 読み終えたばかりではただこの作品の凄さに圧倒されて、ぼーっとしてしまう。
 女子高という閉じられた世界の水面下で主導権を争い合う少女たち。それはどんなアクション映画よりも見応えのある駆け引きの応酬。
 この美しい世界観はいつか映像化されるのだろうか。そうだとしたら、とても楽しみだ。
 ぜひとも本棚に加えたい一冊。


2014年8月1日 読了
※あらすじ※

なんとなく高校の社会科教師になってしまった桐原。行動原理はすべて「面倒くさい」。適当に”センセイ”をやろうとするものの、なぜか問題を抱えた生徒や教師、そして友人たちが面倒ごとを持ち込んできて……小説すばる新人賞作家が描く、新しい青春小説の誕生!


※手に取るまで※

 初めて読んだ飛鳥井千砂作品は『はるがいったら』だった。優しい物語の中に潜んだリアルな描写に、あっという間に引き込まれた。そこから『アシンメトリー』『タイニータイニーハッピー』『サムシングブルー』と読み進め、すっかりファンになったと自負していたのにまだこの初期作品を読んでいないことに気がついた。
 図書館で見つけたときは迷い無く引き抜き、今週の積小説本に加えた。


※感想※

 就活の学年で教員を目指す友人が多いこともあって、高校のセンセイが主人公のこの小説はとても興味深かった。それも品行方正な先生ではない。面倒くさがりで、なんで俺教師になっちゃったんだろうなんて思っている、いたって普通の男性。ただし職業は高校教師。そんなセンセイがヒーローだ。
 仕事においても人間関係においても「面倒くさい」と思ってすべて軽くこなしてしまう。また、それでなんとかなってしまう器用さも持ち合わせているから余計性質が悪い。
 けれど後半に入るにつれ、桐原は周りの人たちに少しずつ感化されていく。変わった方が良いのは分かっている。だが今から変われるのだろうか。笑われはしないだろうか。熱くなっても良いのか。
 基本的な思考回路に似たところを感じる部分もいくつかあったため、桐原の心中語は私の心中語に重なり、桐原の変化は私に新しい道筋を示している。
 主人公・桐原一哉は興味深い人物であるが、その周りを取り巻くキャラクターたちも魅力がいっぱいだ。
 普段はあっさりしていて付き合いやすいのに、女モードになると一気に面倒になる中川。
 電話では必ず「よう、高校教師」「よう、薬剤師」と言い合う、腐れ縁の浅見。
 変な格好をしているのに、中身は至って普通な小枝。
 大人なようでいて、やっぱり子供な高校生の涼。
 ただのジャージ好きかと思えば、あっさりと自分の正体を見破っていた溝口。
 大人なのに、中身は自分本位な子供のままの吉田。
 些細なことでも背負い込んでしまう、いつでも全力投球の永野。
 問題児だけど、根はイイ奴かもしれない那由多。
 学校の中で一番話しやすい、自己嫌悪したくなるほど良い人な坪井。
 自分に気を寄せていることをしっているが、かわすことしかできない若竹。
 すべてが「面倒くさい」主人公をそのままではいさせてくれない、それぞれ問題を抱えた登場人物たち。

 読後感が清々しい、素敵な作品でした。


読了日 2014年7月10日(木) @TOKYO