5月17日火曜日に第38回嶌峰会を開催いたしました。

講師は嶌峰義清さん(第一生命経済研究所常務取締役首席エコノミスト)です。生憎の雨模様でしたが、今回も対面で実施ができて大変喜ばしいことです。会場は大手町ファーストスクエアです。


今回のセミナーの内容をご紹介いたします。

経済・市場を揺さぶる主役が交代:

今年1月に約350万人にまで膨れ上がっていた世界のコロナ感染者数もワクチン効果で激減。オミクロン株の毒性も弱く、経済も回復すると思われたが、感染者数と反比例するようにウクライナ情勢により石油価格が高騰。主役が交代した格好。

 

世界経済:

各国のGDPはスピードに程度差はあれ、去年後半よりアメリカ、ユーロ圏、インドなどはコロナ前より上昇傾向。一方日本やタイは残念ながらコロナ前には届かないものの緩やかに回復を見せている。

各国の中で、中国が感染再拡大やゼロコロナ政策により失速を見せている。ウクライナ情勢の影響はこれから出てくる。

 

続いて各国状況。

米国:

製造業の受注は鈍化傾向にあるが、いまだに高水準。小売の売上も非常に良好で旅行などの需要も回復傾向にある。

失業率も3%台後半でコロナ前、アメリカにおける過去最低水準。これにより労働需給が超逼迫状態賃金の水準は5%台半ばの上昇。賃上げしないと人を雇えない状況。

雇用環境や良好な所得環境を背景に消費は好調だが消費者のマインドが悪化している。要因は物価の上昇。賃金の伸びは5%だが物価の上昇は8%で実質的には−3%となり、生活は苦しくなっている。高インフレにより実質賃金は下落傾向続き、消費の不安定要素になっている。

 

欧州:

雇用環境は3月段階で非常に高い水準で、順調に回復、消費もコロナ前を超える小売売上高を示している。ただアメリカと同じく物価高騰により、消費者のマインドは落ちている。

 

中国:

ゼロコロナ政策の影響が大きく、物が作れない、作っても港から輸出できない状態。直近の新規海外受注が減少しているため7月まで経済は減速傾向。

一方物価の伸び率は価格統制のため3%〜4%台に落ち着いる。

 

日本:

失業率は3%から2.6%に低下、コロナ禍での雇用の悪化は限定的だったが回復は遅い。給与水準も低迷している。米欧と違い所得の回復の遅れが消費の回復にダメージを与えている。

外食・旅行支出の回復は緩やか。全国シティホテル客室利用率はコロナ前の60%に留まっているが、インバウンドなしで考えるとそれなりの数値。

輸出金額の推移、工作機械受注の推移から日本経済は外需が支えていることがわかる。

物価:

消費者物価(コア)の推移から、米国、ユーロ圏が3%〜6%台の上昇に対して日本だけが-1%台に下落。

生産者物価は日米とも10%の伸びで変わらない。

他方、消費者物価は米欧は上昇しているが、日本はマイナス(下落)。仕入れ価格の上昇を価格転嫁できない。ここが日本の問題、アキレス腱でもある。

 

米国金利:

2000年以降の金利低下トレンドは終焉の気配。現在は逆イールド間近で、リセッションの可能性がある。(逆イールドとは短期金利が長期金利の水準を上回る状態のこと)

株を売って長期国債を買う→株が値下がり→長期金利が値下がり→中央銀行は短期金利だけ管理=逆イールド→不況

インフレの時代はデフレの時代に比べて景気が落ち込むのに時間がかかるので来年半ばまで景気はもつ可能性がある。

 

為替:

円高トレンドは終わった可能性。長期的な視点では150円以上も視野に入る。

 

                                     以上