9月4日 ㈱第一生命経済研究所 シニア・フェロー
嶌峰義清先生による定例の経済セミナーを開催しました。
株式市場が大きな変動を見せる中、今後の経済動向はどうなるか嶌峰先生の分析に参加者の注目が集まりました。以下演の要旨です。
1.グローバル経済動向:
〇主要国(日米欧中)の経済・市場動向は不安定でアップサイド・ダウンサイドどちらにも転びうる際どい状況
〇製造業はAI関連ビジネスの先行き懸念等から下降気味。また、これまで景気をけん引してきた非製造業の勢いには陰りが。
〇在庫循環面からみると在庫調整はほぼ完了し、世界経済は持ち直す方向だが、今後の景気動向は製品への需要次第 ⇒ 今後の米国を中心とした個人消費・賃金の動向が鍵に
2.各国景況感
米国
〇個人消費:実質賃金増加が好調な個人消費を下支え。一方で重い利払い負担が消費者マインドに水を差し、消費者信頼感指数は低下、消費マインドはリセッション水準近傍。特に個人向け住宅市場は高金利の継続により低迷継続
〇労働市場;非農業就業者数の低下及び失業率の上昇等、労働市場は軟化。企業側の雇用意欲は後退気味
日本
〇企業景況感:輸出はやや回復するも、円高進行のため今後には期待できず。設備投資の先行指標である工作機械受注も改善しつつあるものの一服感あり。
〇個人消費:最新のデータ(6月)で実質賃金はプラスに転じ、これに伴って実質家計支出もプラスに
中国
〇消費は一層の減速、不動産市況の更なる悪化が深刻化する状況。特に住宅価格の下落が止まらず、地方当局の財政悪化をもたらし大きな社会問題に。
〇輸出・工業生産は米中対立から半導体分野での不振が継続し一進一退の動き。
〇対中投資も人口減少懸念や現政権の外国企業への強硬姿勢等に対応した脱中国傾向の高まりから外資の撤退が続き、資本流出へ。
欧州
〇ユーロ圏全体の消費はエネルギー価格上昇の鎮静化、堅調な雇用情勢から持ち直し
〇ユーロ中核国ドイツはロシア・中国との関係が深く製造業が低迷しており、生産回復は足踏み状態
3.世界主要国の物価・賃金動向
〇消費者物価上昇率は目標水準である2%程度に収れん
〇但し、これまで安定的に推移してきた資源価格が気候変動の影響等から再上昇
〇構造的要因から労働力不足は続き、実質賃金は引き続き上昇
4.金融政策
〇景気低迷からユーロ圏は利下げ開始
〇米国FRBは景気状況に鑑みると利下げは一歩遅れ。今後の政策スタンスは次回FOMC待ち
〇日本はリセッション懸念が無ければ中立金利へ向け水準訂正か
5.各国経済見通し <出所(株)第一生命経済研究所 8月予測 単位;%、>
2024 2025
米国 +2.5 +1.8
ユーロ圏 +0.7 +1.2
日本(年度) +0.5 +1.1
インド(年度) +7.0 +6.8
中国 +4.6 +4.0
6. 市場見通し
米国
〇長期金利:これまでの上昇局面は終了か。
〇株式市場:下落防止には景気が失速する前の利下げがカギ
〇ドル相場:利下げ開始により2021年以降のドル高相場は終了
日本
〇ドル円相場:米国利下げが視野に入るまでは円高への本格的転換は見通せず
〇株式市場:インフレ経済への転換から株価水準は切り上げか
以上