何だか切なくて
原因は分かっているけど
その分もやもやも大きくて。


「何だか今日はセンチメンタルなの」
と言うと
「このくらい?」
と指で測ってくれて
「それはセンチメートルだよ」
と笑い話に出来たりして。


心がふわっと軽くなって
ほっこりと温かくなる。



いつだって羨む過去を作りたいと思ったんだよ。


 日が暮れていくにつれ辺りは暗さを増し、キャンドルは明るさを増していく。
 薄暗い手元も、風に乗ってくる金木犀の香りも、ゆらゆらと動くキャンドルの灯火も全てが私の味方をしてくれている気がした。ここは敵のいない安全で幸せな場所だと思えた。
 時計に目をやると、もう部屋に入って現実に戻らなければいけない時間が近付いていた。
 ふう、と一息ついたら、ちゃんと人の形に戻ろう。そう心に決めながらも私はまだふわふわと空気と混ざりながら人には戻れずにいた。



 目が合った。そう表現するのが一番しっくりくる気がした。
 空を見上げると視界の真ん中に半月があった。
 いつから私のことを見ていたのだろう。なんて思いながら何だか気恥ずかしくて思わず目を逸した。

 暫くして同じようにして空を見上げると、真っ白な雲が空を覆っていた。
 どうやら月の方も目を逸らしてしまったらしい。

 私は急に1人ぼっちにされてしまったようで寂しくなって何度も何度も空を見上げていた。