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DELTA MACHINE

待ちに待ったデペッシュモード4年ぶり13作目のアルバム「DELTA MACHINE」がドロップされました。

27日付のBBC RADIO-1 UK Official album chartでは、ジャスティンティンバーレイクに続いて2位。(ちなみに3位はデビッドボウイ)順調な滑り出し!です。

書きたいことがいっぱいあって脳内を整理するのが大変です。しかしいちおう僕もミュージシャンの端くれですので、そういった視点から書いてみたいと思います。

(あれ書こうこれ書こうと思ってたことのほとんどが、日本盤の解説を書かれた吉村栄一さんにすでに書かれてました。あたりまえかw。)


イギリスで最も権威のある音楽紙NMEのスタッフが今月13日、自身のブログでデペの歴代アルバムのランキングを発表しました。(http://www.nme.com/blog/index.php?blog=1&p=13410)それによると、ランキングは以下の通り。

12 'Construction Time Again' (1983)
11 'A Broken Frame' (1982)
10 'Some Great Reward' (1984)
9 'Exciter' (2001)
8 'Sounds Of The Universe' (2009)
7 'Speak & Spell' (1981)
6 'Playing The Angel' (2005)
5 'Ultra' (1997)
4 'Songs Of Faith And Devotion' (1993)
3 'Music For The Masses' (1987)
2 'Black Celebration' (1986)
1 'Violator' (1990)


これ、あんたの独断であり、単に好みの問題だろう!?というツッコミもいれたくなりますが、僕の独断と好みは置いといて、世間一般的、音楽史上的に考えても売上、内容から言っても「Violator」が1位なのはケチのつけようがないでしょう。

話を戻すと今作「DELTA MACHINE」は本国イギリスでは早くも「21世紀のヴァイオレーター」と言われてます。

今作「DELTA MACHINE」は久々に迷いなく確信を持って作られた傑作になってます。そして僕にとってこのアルバムは早くも自分内デペチャートで、Black Celebrationと並んで1位を争うくらい好きなアルバムかもしれません。



昔からインディーロックに強い米シカゴ発の巨大音楽ニュースサイトPITCHFORKのレビュー(http://pitchfork.com/reviews/albums/17792-depeche-mode-delta-machine/)には「Songs Of Faith And Devotion」のアウトテイク集みたいだ」とちょっと辛辣に書かれてました。なるほど、言わんとしてることはわからなくもないです。


先にも述べましたが彼らのキャリアの中で一つのピークだったViolatorの次に作られた
Songs Of Faith And Devotionは、Violator以上にギターやピアノが前面に押し出され、生々しくエモーショナルなアルバムに仕上がりました。

しかしこのSongs Of Faith And Devotionがリリースされた1993年はドイツのHardfloorがデビュー盤にして歴史に残る名盤「TB Resuscitation」をリリースした年であり、アンダーワールドも「Rez」の大ヒットを出し、世界的にアシッドハウス・リバイバルが言われ、ダンスでテクノな音楽が世界中を席巻してた年でもありました。

元々デペが所属してたMUTEはピコピコ音楽の殿堂であると同時にニック・ケイブ&ザ・バッドシーズに代表される変態UKブルースのレーベルでもあったわけで、デペがSongs Of Faith~でそっち(変態ブルース)に傾いていっても僕的には驚きはなくて、当時コンフュージョンをやっていた僕と当時の相方の梶原はSongs Of Faith~も流行りのテクノも喜んで聴いていました(だから売れなかったんですけどw)。

あの当時Songs Of Faith~を出した時のデペには相当の決断と覚悟、そしてなによりエレクトロ音楽の大家としての「意地」があったと思うんです。ちょっと・・・いや、かなり、世の中に拮抗してた。

話を戻します。PITCHFORK記者の言わんとしてることはとてもよくわかりますがこれだけはツッコミたい。今は1993年じゃないんだよ!?


マーティン・ゴアは「今作はモダンにしたい」とインタビューで語っていました。

普段、踊れる打ち込み音楽しか聴かない人はこのアルバムを聴いてこの文章を読んで、はっ?何言ってんの?古臭くすら感じるし全然モダンじゃねーしと!思ってらっしゃる方もたくさんいらっしゃるでしょう。

マーティンがここで言っている「モダン」とは、例えば昨年のグラミーアーティスト、アデル、今年のグラミー新人アーティスト、マムフォード&サンズや、故エイミー・ワインハウス等のオーガニックでちょっと懐かしいような感じででありながら最新/最先端のサウンドを奏で、世界的にモンスター級のメガヒットを飛ばしている今のイギリスのアーティスト達、そして、21世紀で最も過激と言っていい英国産エレクトロダンスビートであるダブステップに、ボーカルや温かみのあるビンテージエレクトリックピアノをフィーチャーしポスト・ダブステップ勢と呼ばれているジェイムズ・ブレイクやScuba、SBTRKT等の事であると思います。スクリレックスやワンダイレクションやデビッドゲッタの事ではありませんw

もっと簡単に言うと、ビンテージ(或いはオーガニック)+最新技術 というのは、今のトレンドなのです。今は2013年であって、1993年ではないのです。

デビッド・ガーンもインタビューで「今までと同じやり方にぶち当たったので一度立ち止まって考え直してた。もっとオーガニックな要素を入れる事にした」と語っていました。

そんなデイブ、ここ数年のレコーディングやスタジオライブの動画を観ると、ブラウナーのVM-1やソニーの800-G等の現行では超~高級であるマイクを手持ちにして激しく歌ってる姿が確認できます。(我々の感覚から言うとVM-1手持ちって!800-G手持ちって!!壊れたらどうすんの!!??と思っちゃうんですがw)


何が言いたかったかというと、山ほどのビンテージ&ガジェットシンセサイザーと山ほどのビンテージギターとデイブの生々しいボーカルを、最新最先端のマイクや録音システムで録音して練り上げられたのが今作DELTA MACHINEなんです。

時代に拮抗して作られたアルバムではないんです。時代に祝福されて、作られるべくして作られたアルバムなんです。


ちょっと調べてみたら今作とここ数作のプロデューサーであるベン・ヒリアーは元々U2、スマッシング・パンプキンズ、ブラー、スエードなんかを手がけてた人で、デペに特に思い入れはなく、単に「仕事」として引き受けたんだそうです。それで一緒に3枚もアルバムを作っちゃったわけなんですが、今作ではヒリアーが元々持ってた「歌心」と、ヒリヒリするようなオルタナティブ感が今までで一番うまく発揮できたように思います。

そして・・・これが一番書きたかったことなんですが、ミックスダウン・エンジニアとして、デペ中期黄金時代の立役者フラッドが復活!してる今作、とにかくもう、フラッド、神の仕事です。これは。なんて言えばいいんだろう?あっ、「神業」或いは「神技」でいいのかな?

1曲目「Welcome to my world」、えっ!?何これ!?Burial!?というくらいのポスト・ダブステップ的な質感の過激にブリブリ言ってるアナログシンセと繊細かつ大胆なビートに乗っかってくる、リバーブ、ディレイといった空間系エフェクターを一切使ってないデイブの生々しいボーカルと息使い。もうここまでだけで僕は、す、すっげえ!!フラッドさん、ごめんなさいごめんなさい!と正座してしまったわけなんですが、1分43秒から荘厳に入ってくる中~後期ビートルズの様な小編成ながら重厚なストリングス!!!!

・・・すみません、ちょっと興奮してしまいました。

こういうふうに1曲ずつ書いていくとキリがありませんが、音響的にもめちゃくちゃモダンです。ビョークやマッシブアタックやジェイムズブレイクは好きだけどデペッシュモードはなあ・・・という人にこそ自信を持ってお勧めしたい音響工作です。あなたの好きなメランコリアです。

コアなファンからはデペ低迷期或いは迷走期といわれがちな作品をプロデュースしたティム・シムノンとマーク・ベルというミュージシャンがいます。

この二人は僕にとっては永遠のあこがれであり神なんですが・・・結局フラッドには適わなかったかったんだなあとしみじみ思ってます。


僕個人の勝手な意見では、このアルバムの質感や空気感は前出Songs Of Faith And Devotionよりも、僕が一番好きなアルバムBlack celebrationに近いです。そして、むりやりビートルズに例えると、僕がビートルズで一番好きなアルバムはマジカルミステリーツアーかリボルバーなんですが、実際一番たくさん聴いたアルバムはアビイ・ロードなんです。DELTA MACHINEのブレなさと相反する柔軟さ、新しさと相反する懐かしさはアビイロードを彷彿とさせます。


どの曲も素晴らしいですが個人的なベストトラックは「Broken」です。まるで初期デペに戻ったかのようなシンセサウンドとボーカルのメロディーライン・・・明るいんだか暗いんだか救いなのか絶望なのかわからないサビに、突如として入ってくる今のデペらしいギター。これは今のデペにしかできない曲です。3分6秒からのブレイク~大サビ~エンディングが素晴らしい(泣)

アジアツアーも考えなくてなくも無いと発言したばかりのデペ。来日を祈りましょう!