皆さま、こんばんは照れ

 

今夜も、<冬だから『ミサ』を見よう>シリーズをお送りさせていただきます。

 

本日紹介する第5話は、話の展開自体にあまり動きは無いのですが、とにかく絵映えのする場面が盛りだくさんキラキラ

一番は葦畑の風景ですが、それ以外にも画角が印象的だったり、目線だけで思惑が交錯するような場面が多い為に、より登場人物の感情にクローズアップした演出が目立つ回だと思います。

 

もちろん、韓国での放送当時、多くの女性視聴者がムヒョクに恋した「夜通し看病」の場面は必見ラブラブ

 

今宵も、残酷で美しい『ミサ』の世界を心ゆくまでご堪能ください照れ

 

 

それでは、Let’s廃人ドラマの世界へ!!

 

ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま

 

 

제5화 「いつか、空の上に・・・」

 

 

ウンチェが心の中から無理やりユンを追い出した翌朝、娘の寝顔を京劇俳優のようにめかし込む母・ヘスクとスクチェ。(※でも、緑のアイシャドウって💦)

 

ぼんやりと目覚めたウンチェは、勝手に施されたデタラメなメイクに仰天。

 

そんな娘にヘスクは「ソウルホテル、大手物産勤務、次男坊、江南にマンションあり」と勝手に決めたお見合いの予定を告げてきます。

これまでユン以外との結婚を空想すら出来なかったウンチェですが、ようやく「サヨナラ」を告げた片想いを吹っ切る為にも、新しい出会いを前向きに捉えて見合いの話を受ける事に。

「気に入ったら、私の方からプロポーズするね」

 

*・・・⁂・・・*

 

思い切ってお見合いに出掛けたウンチェでしたが……。

 

相手は、どうみてもウンチェより一回り以上は年上のいけ好かないオヤジ💦

「私が気に入りませんか」
「気に入らないというか、私のタイプじゃないんですよ」
「遠回しに言わず、私のどこが気に入らないんですか? 仰ってください。言っても構わないですから」
「まあ、言えというなら。俺は、オタクの顔が気に入りらない。これでいいか?」
「私の顔がどうだって言うんですか?」
「家に帰って鏡を見て下さい」


そう捨て台詞を残して、あげく割り勘で帰るクソ男。

 

「顔が気に入らない」なんて言われて、思わず手鏡を出して自分の顔を確認してしまうウンチェがいじらしいですよね。

大丈夫だよウンチェ! あんなオヤジに、あなたは勿体ないから!

※このお見合いエピソード、一見無意味なようですが、後にあるエピソードに繋がる布石として活かされますので覚えておいて下さいね。

 

*・・・⁂・・・*

 

あっさりとフラれて気落ちしてレストランを出たウンチェがホテルのラウンジからエントランスに出る時に、そのお見合いスタイリングの全貌が明らかになります。

 

 

全体をピンクのトーンでまとめて、コートはボルドーとペールピンクをツイード織りした大人っぽいラウンドのステンカラー。

 

足元は、履き慣れないダスティ―ピンクのパンプスに、ベルベットのレッグウォーマーを合わせたエレガントなスタイルです。

 

この時ウンチェが身にまとった衣装は、放送当時は大変話題になりました。

他の場面ではこんな風にクラシカルで大人っぽい装いをしないウンチェなので、全編を通して余計印象に残ったのかもしれません。

 

*・・・⁂・・・*

 

ウンチェがお見合いをしたレストランがある同じホテルのプールで、甘いデートを楽しんでいたユンとミンジュ。

 

 

*・・・⁂・・・*

 

その帰りの駐車場で、撮影があるユンは先に帰ります。

 

 

ユンを見送ったミンジュが車に乗り込んだ直後、ウィンドウを乱暴に叩く手が!

「何でしょうか?」

ウィンドウを下げて訊ねるミンジュに、いきなりドアを蹴り上げる不遜な男。

「オバさん、降りろ」

その言い草に腹を立てたミンジュが、金切り声を上げながら車を降りてきます。

 

「”オバさん”?!」
「お前、どこに目をつけて運転してる?」

「ちょっと、おじさん!」
 

「オバさんの車に、うちの子が轢かれたんだよ」
「え!?」


驚いたミンジュが車の下を覗き込み、悲鳴を上げて震えだします。

「早く車をどけろ。車をどけろって言ってるだろう、聞こえないか?」
「知りませんでした。何も感じなかったし、駐車する時に何も感じませんでしたし。知りませんでした」

「車をどけるんだ」

予期せぬ事態に怯えるミンジュに、男は冷たい態度のまま車をどかすようにと続けます。

「すみませんでした。本当に、すみません。私が、保障します」

そう言って財布から小切手を抜き出すミンジュ。

「これでも不足なら、振込口座を教えて下さい。私が誰か知ってますよね? カン・ミンジュ……っ!」

必死に言い募るミンジュに、男はゆっくりと無言のまま顔を近づけます。その様子に勝ち気な態度を復活させたミンジュ。

「何ですか? 何のつもり? 私を口説こうっての?」

 

「あいにくだけど、相手を間違えたみたいよ、おじさん。私はカン・ミンジュよ! むやみにこんなことしたら……っ!」

 

「黙って車をどかせ。1分以内に俺の目の前から消えろ、オバさん」
 

自分の思い上がりを嘲笑うかのようにドスを利かせる男に怖気づいたミンジュは、慌てて車に乗り込みその場を去ります。

かつて裏路地で様々な悪事に手を染めてきたムヒョクは、人の心理を掌握する能力に長けています。
特に、自分にとって”どうでもいい相手”に警戒心を抱かせたり、逆に無防備にさせてつけ込むなんて所業はお手の物です。

 

*・・・⁂・・・*

 

第一段階に手応えを感じたムヒョクは、駐車場から”仕掛け”を拾い上げ、車内で淡々と着替えをしながらユンに連絡を取ります。

 

「ユン」
「兄貴! どこなの?」
(お前は)どこだ?」
「放送局。こっち来てみる?」
「今日から、正式にマネージャーか?」
「仕事は明日からだよ。でもスタジオ見学も面白いよ」

「10分待ってろ。タクシーに乗ったから、すぐ行く」

電話を切って、ハンドルを握る手に力を込めるムヒョク。
造作なく縮まっていくユンとの距離感にも手応えを感じながら、静かに車を発進させていきます。

 

*・・・⁂・・・*

 

ユンを迎えに行くために車を走らせるムヒョク。


ミンジュを騙す為に使った血塗れのぬいぐるみを冷めた目で見つめ、

 

突然車の窓から投げ捨てます。

 

信号待ちでサイドミラーに目をやると、そこには自分が捨てたぬいぐるみを拾うウンチェの姿が。

「ああ、可哀想なワンちゃん。お姉ちゃんが、綺麗に洗ってあげるからね」

 

 

自分がユンを陥れる為に用意した小道具を抱き締めるウンチェ。
人々が遠巻きに眺める汚れたぬいぐるみを大事そうに抱えるその姿に、ムヒョクはまるで自分が抱き締められているかのような甘やかな錯覚に陥ります。

”捨てられた存在”を拾い上げて優しく包み込んでくれるその白い手だけは、この間の迷子のように、他の誰が無視しても決して見過ごさない。

 

 

信号が青に変わり後続車にクラクションを鳴らされても、ムヒョクはその場に留まってウンチェを見つめ続けていました。

 

*・・・⁂・・・*

 

昨晩怖い夢を見たせいでオ・ドゥリのベッドで寝たユンは、撮影がある日の朝になっても中々起きようとしません。

 

 

*・・・⁂・・・*

 

同じ朝、いつものように3姉妹を起こしに来た母がウンチェの体調不良に気が付きます。

 

「あんた具合悪いの。汗かいてるじゃない。熱もあるね」
「もともと丈夫だし、直ぐに治るよ」


そう母にも自分にも言い聞かせて、昨日拾って綺麗にしたぬいぐるみに朝の挨拶をするウンチェ。

「アンニョン、ワンちゃん。良く寝れた?」
 

*・・・⁂・・・*

 

撮影がある為に隣へユンを呼びに行ったウンチェは、いつまでも起きないユンを苦手な幽霊話で脅かして目覚めさせることに。

 

「あんた、コンコン幽霊知ってるでしょ? 三階から逆さに落ちて死んだ幽霊。頭をコンコンとぶつけて歩く幽霊。コンコン幽霊が、自分を落とした犯人を捜して彷徨ってる。名前はチェ・ユン。
ユナ、今あなたの横に誰かいるよ。コンコン幽霊と仲良くね、私は行くわ」


ユンへの恋心を無理やり終わらせても、相変わらず彼の世話を焼く自分が虚しくなるウンチェ。

 

*・・・⁂・・・*

 

仕事に向かおうと家を出てもまだ自分に甘えて抱きつくユンを、心の揺れを振り切るようにウンチェは突き放します。

 

「ユナ。ちょっと離してくれる?」

首を振るユンに、

「コレ、離しなさいよ、ちょっと!」
「嫌だ」


遂に堪らなくなって、ユンの手を振りほどくウンチェ。

「ねぇ! 私はあんたの奥さんなの? 私が、あんたのママなの?! ウンザリよ! 何なのよ本当に!」

 

「何? お前、いま何て言った? ”うんざり”? 俺が?」
「そうよ、そう! うんざり!」
「俺いじけたぞ、ソン・ウンチェ! マジでいじけたぞ! 怒って今日の撮影行かないぞ、俺!」
「行こうと行くまいと、ご勝手に!」


近くにいる限りこの地獄は続く。ウンチェはため息をつきながら階段を駆け下りていきます。

 

*・・・⁂・・・*

 

「ああ、移民したい。行って10年は戻らないんだから」

ユンに背を向けて家を出たウンチェは、目の前にいるムヒョクの姿に息を飲みます。

―――また幻を見ているの?

 

「私、すごく具合悪いのかな、本当に」

 

「しっかりしろ、しっかり! ソン・ウンチェ! しっかりしろ、しっかりしろ!」

頬を叩いてもう一度ムヒョクを見たウンチェは、やはりそこに見えるムヒョクに目を丸くしたまま近づいていきます。

目を閉じたまま壁に寄り掛かるムヒョクの頬を突くウンチェ。

パッと目を開けたムヒョクは、イヤフォンを外すとウンチェにじりじりと歩み寄ります。

「なんで突く?」
「アジョシ、なのね」
「どうして突く?」
「あの、それがちょっと……。私が幻なのかなって、確認したくて」
「お前も俺が好きなのか?」

(※「お前も」って、もしかしてウンチェの勘違いに付き合ってあげてる?)
「いいえ!」
「なのに、どうして突くんだ? じっとしてる人間を!」
「……」

「好きなんだろう? 好きだから、突いたんだろう?」
「いいえ!」

「顔色が悪いな。どこか具合悪いのか?」
「いいえ」
「具合悪そうだけど」
「いいえ」
「顔が蒼白みたいだけど?」
「いいえ!」
「お前、“いいえ”しか言えないのか?」
「……いいえ」

 

「お前、俺が嫌いだろ?」
「いいえ! ……っ!」

誘導尋問にのって、「ムヒョクを嫌いじゃない」と答えてしまったウンチェ。


勝ち誇ったようなムヒョクの笑みに、ウンチェは一瞬見とれます。

 

しかし次の瞬間、キスの一件を思い出したウンチェは一度背を向けたムヒョクに再び向かっていきます。

「ねぇ! ねえ!!」

 

「私が警告したわよね? 私の前にまた現れたら殺すって警告したわよね! 私は、”やる”と言ったらやるわよ。殺すと言ったら殺すのよ、本当に!」

興奮するウンチェに対し、ムヒョクは落ち着いた表情のまま微笑みすら浮かべて答えます。

「殺せよ」
「ちょっと!」

「殺せよ」
「あんた、おかしい奴でしょう?」

「ああ」

「あんた変態なの?」
「ああ」

「帰って! 早く帰ってよ! あんたの国に帰って! あんたの国へ帰りなさいよ! オーストラリアに帰って! オーストラリアに!」

ウンチェに叩かれながらも全く動じないムヒョクですが、一度火のついたウンチェは気が収まらず更に捲し立てます。

「早く帰って! 帰ってよ! 私、あんたが嫌い! あんた、本当の私のタイプじゃないのよ! あんたみたいなヤツ、めちゃくちゃ嫌だから帰って! 帰って、早く! お願いだから!」

まるで無理やり怒っているようなウンチェの様子が、ただただ面白いばかりのムヒョクは、押しのけようとする彼女の手にもびくともしない様子で飄々と立っています。

「お前、何してる? ソン・ウンチェ!」

またもユンに叱責されてしまうウンチェ。

黙ったままのムヒョクに代わって、ユンが口火を切ります。

「お前がどうして兄貴に対して”帰れ”なんて言うんだ?」

ウンチェには構わず、ユンに微笑みかけるムヒョク。

「良く寝れたか?」

ユンもムヒョクに対しては柔和な顔を見せて答えます。

「兄貴も良く寝た? いつから来てたの?」
「1時間前からだ」

 

「今日は母さんと一緒の撮影だから、少しして母さんが出て来たら一緒に行こう、兄貴」

そう気軽に言われて一瞬固い表情を見せたムヒョクですが、直ぐに表情を切り替えます。

「……そうか」

2人の会話から事情を悟ったウンチェが、驚いた表情でユンに問い質します。

「このアジョシ。……新しいマネージャーが、このアジョシなの?」
「そうだったら、何だよ!」
「あんたどうかしちゃったの? おかしくなったの? どうしてこんな奴を……」

「お前、その言い方は何なんだ? ”こんな奴”だって? この兄貴はお前より年も上で、お前より……。お前、今日は薬でも飲んだのか?」
「私、今からあんたのスタイリストはやらない! 他の人を探して!」


ウンチェが家に戻ろうと踵を返したその時、支度を終えたオ・ドゥリが姿を見せます。

「あら、ごめん、ごめん。私のせいで遅れたわね」

 

「母さん! ウンチェが俺のスタイリストをしないって!」
「え? どうして?」
「知るかよ。他の人を探せって」

 

「ユンのような我儘の相手はウンチェ以外には務まらない」と息子の不甲斐なさを詫びているようで、その言葉にはユンへの愛情が溢れています。
そんなオ・ドゥリの言葉を、表情を失くして静かに聞くムヒョク。

 

ウンチェをなだめて歩き出したオ・ドゥリが目の前に来ると、ムヒョクは深々と頭を下げます。

 

「あっ、あなた!」

驚くオ・ドゥリに、ユンは改めて紹介をします。

「今日から俺のマネージャーになったんだ、母さん。俺のムヒョク兄貴、知ってるだろう?」

ユンの紹介に、ムヒョクは笑顔を向けます。

この時初めてムヒョクの名前を知ったウンチェは、いつの間にか親しくなっているユンとムヒョクの様子が不思議だったけれど、仕方なく助手席に乗り込みます。

 

*・・・⁂・・・*

 

ロケ地に向かう車中で、隣にウンチェを乗せたムヒョクは動揺を必死に隠そうと努めました。

 

―――まさか、初日から一緒になるなんて予想外だった。

ユンと距離が近づけば、それは必然的にオ・ドゥリとも顔を合わせることになる。”憎しみ”も”恋しさ”も、決して悟られてはいけない。
自分で選んだ環境に早く慣れて冷静を保とうと、ムヒョクは決意も新たにハンドルを握ります。

 

「彼は、ウンチェの推薦なの? 彼氏じゃないの?」

 

「違います、おば様!」

そんな会話を聞き流しながら、4人を乗せたワンボックスは田舎道を走ります。

 

*・・・⁂・・・*

 

2時間ほど車を走らせてロケ地に到着して準備が始まる、自然と母の姿を目で追ってしまうムヒョク。
そんなムヒョクを、オ・ドゥリもしきりと怪訝そうに見つめ返します。

 

ユンはウンチェの退職宣言を気まぐれだと思って茶化しますが、ウンチェはいたって本気モード。

「ユナ、カッコ良く別れよう。笑顔で終わらせたいの」
 

頑なにそう言うウンチェ。
するとオ・ドゥリも平然と言ってのけます。

「ウンチェとムヒョク兄貴なら、母さんはウンチェを選ぶわ。母さんも”嫌”よ、彼。何となく、気に入らないの。あなたが意固地になる、ユナ?」

ユンが心を許していても、ムヒョクに対する警戒心を抱き続けているオ・ドゥリ。
納得できずに拗ねるユンに、「ウンチェを残留させるように」と言い渡して強引に話を終わらせてしまいます。

会話が聞こえたはずのムヒョクを、一瞥するウンチェ。

 

ウンチェもオ・ドゥリも、「気になって仕方ない」「その理由を追求したくない」、そう思うからこそムヒョクを排除しようとしているように見えます。

”どうでもいい存在”、”無視できる存在”ではない強烈な何かをムヒョクに感じるからこそ、いっそ自分の前からいなくなって欲しいように思えてなりません。

 

*・・・⁂・・・*

 

どんな需要があるのか不明なユンとオ・ドゥリの撮影が始まりました💦

 

 

※マジで、誰が喜ぶんだこのグラビア……(-_-)

 

*・・・⁂・・・*

 

ムヒョクの姿が突然見えなくなり、心配になったウンチェは葦畑を掻き分けてムヒョクを探しに行きます。

 

「アジョシ アジョシ! 変態アジョシ!」

川の畔近くまで探索したウンチェの前に、空を仰いで横になるムヒョクの姿が見えてきました。

 

駆けてきたウンチェが、ムヒョクの様子を覗き込みます。

「空がいまいちだな~。オーストラリアの空は、すごく綺麗なのに」
「この国の空も綺麗ですよ」
「オーストラリアの空の方がもっと綺麗だ」
「それなら帰れば、オーストラリアに! そんなに綺麗なら自分の国に帰って、楽しく暮らせばいいじゃない、外国かぶれアジョシ!」


ウンチェの悪態など気にも留めず、眩しそうに空を見つめ続けるムヒョク。

「あの上へ行ったらどうだろうな……」

その言葉に、ウンチェも陽光が眩しい空を見上げてみます。

「ここで見るよりも、ずっと大きくてカッコいいかな?」

 

「気になるなら行ってみたら?」

 

「行くさ、必ず。もう少しすれば……。行くさ、必ず」

ムヒョクの置かれた状況を知る由もないウンチェは、その言葉の真意に気が付かないままオ・ドゥリからの電話を受けます。

それを耳にしながら、ようやく起き上がるムヒョク。

「撮影が終わったので、ご飯を食べるみたい……です」

ムヒョクの静謐なオーラに気圧されて、咄嗟に言葉尻が丁寧になってしまうウンチェ。

それでも答えないムヒョクに、急かすように声を掛けますが……。

「食事よ、食事! 食事しないんですか? クビになるにせよ……っ!」

覗き込んだムヒョクの顔に、ウンチェはそれ以上の口をつぐんでしまいました。

 

空虚な瞳に宿る深い哀しみに目を奪われたウンチェは、語りかけるのをやめて寄り添うようにムヒョクの傍に佇みます。

 

先ほどまでムヒョクを排除しようとしていたウンチェの心が、ムヒョクの孤独や憂いに触れたことで変化していきます。

 

*・・・⁂・・・*

 

風に葉を揺らす葦畑の中、前を行くムヒョクを追いかけるようについていくウンチェ。

 

「飛行機のチケットを買うお金はある……んですか? 私が買いましょうか? 飛行機のチケット」

先程までの不遜な言葉使いを改めながら、ムヒョクの様子を気遣ってあれこれ話しかけて歩くウンチェ。

ムヒョクが一人で先を行ってしまったことに気が付かないまま、独り言のように呟き続けます。

「ユニがアジョシをクビにするって。そうすると言ったんです。良かったんじゃないかな、かえって。あまり頑張らずに、高嶺の花なら最初から見ない方がいいですよ」

 

「いや、だから……私が高嶺の花ってことじゃなく。私の経験では、時間が経って情が深くならない内に心の整理をした方が早く終わらせられるし、はるかに胸も痛めず忘れるのも簡単だと思うから……」

振り返ると既にムヒョクは先に行ってしまい、慌ててその後を追いかけるウンチェ。

「アジョシ!」

 

 

振り向きも立ち止まりもしないムヒョクからはぐれぬ様に必死で後を追うウンチェの姿は、メルボルンの街中をムヒョクを信じてついて行った姿に重なります。

美しい葦畑を包み込む午後の柔らかい光の中に、そのまま2人の姿が溶け込んで消えていくような幻想的な場面になっていますよね✨

 

 

 

あしあとビーグルしっぽ後編へ続きます…ビーグルあたま